第222話 大学編part22 姫香の誕生日⑤

 カレーライスを食べ終えた俺以外の三人は苦しそうな表情でソファーにもたれかかっていた。


「お前らな~。いくら何でも食べすぎだろ」

「仕方ないじゃないですか。翔君のカレーライスが美味しすぎるんですから。こうなってしまっているのは翔君のせいです」

「そうよ。姫香ちゃんの言う通り翔が悪いわ!」

「そうだな~。こんなに美味しいカレーライスを作る翔が悪いな!」

「なんで俺が悪いみたいに言われてんだよ」


 なぜ、三人が苦しそうにソファーにもたれかかっているかというと、自分のお腹に入る許容範囲以上の量のカレーライスを食べたからだ。


「どう考えてもお前らが悪いだろ」

「美味し過ぎるっていうのも罪よね~」

「ほんとですね。翔君の手料理久しぶりに食べたので、美味しすぎてつい食べ過ぎてしまいました」


 そう言った姫香は相変わらず幸せそうな顔だ。

 

「やっぱり好きな人の手料理は格別ですね」

「いいわね~。歩は包丁すら握れないからね。作ってもらいたくても作ってもらえないのよね」

「そうなんですね」


 急に名前を出された歩はぎっくとした表情で俺のことを見た。

 そんな歩に「大丈夫だ。むしろサプライズをしてやろう」という意味を込めて頷いた。

 

「でもまぁ、それ以外のことを頑張ってくれてるからいいんだけどね」


 そう言って真美は歩のことを見て微笑む。

 

「翔君も家事を手伝ってくれるから助かってます」

「翔はほんとに完璧よね~。料理もできて家事もできて」

「ですね~。なので、料理くらいは私がって思って作らせてもらってます」

「お互いいいパートナーと巡り会えたってことね!」

「そうですね!」

「いつもありがと歩!」

「いつもありがとうございます翔君!」


 真美が歩に。

 姫香が俺に。

 それぞれ感謝の言葉を言った。

 真美に関しては隣に座っている歩の腕に抱き着いていた。

 

「感謝を言わなきゃいけないのは俺たちの方だと思うんだけどな」

「そうだな~。俺なんかいつも真美に迷惑かけてばかりだし」

「てことで俺たちも言っとくか」

「そうだな」

「姫香いつもありがとうな」

「真美いつもありがとう」


 今度は俺が姫香に。

 歩が真美に日頃の感謝を伝えた。

 そこに恥ずかしさはなかった。

 なぜなら、心の底から姫香に感謝しているから。 

 感謝の言葉はするっと口から零れ落ちた。


☆☆☆

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