第223話 大学編part23 姫香の誕生日⑥

 それから数時間後。

 満腹状態の三人は眠りについてしまっていた。

 

「食べたら寝るって子供かよ」


 俺はソファーの上で気持ちよさそうな寝顔で眠っている三人に掛け布団をかけてやった。

 そして俺はそんな三人の前に座って落ちないように様子を確認しながら読書をすることにした。

 これから読もうと思っているのは、つい最近まで姫香が読んでいた俺の誕生日に真美がプレゼントしてくれた本だった。

 姫香曰く、もの凄く感動したのだという。

 なので俺は読むのを楽しみにしていた。

 一時間ほど読書に集中して、物語の二章に入ろうとしたところで「んぅ~」と姫香が目を覚ました。


「おはよう姫香」

「翔君……あれ、私寝てましたか?」

「気持ちよさそうに寝てたな」

「なんかすみません」

「別に謝らなくてもいいだろ」

「そうですね。ところで、何をしてたんですか?」

「例の本を読んでて、ちょうど二章に入ろうとしてたところだよ」


 そう言って俺は手に持っていた本を姫香に見せた。

 

「読み始めたんですね!読み終わったら話し合いましょう!」

「そうだな」

「楽しみです!」


 すっかりと目が覚めたのか姫香は本棚から本を一冊取り出してきて、俺の隣に座った。


「お二人が起きるまで私も読書をすることにします。コーヒー淹れますか?」

「今日は俺が淹れるよ。いつも姫香が淹れてくれてるし、今日は姫香の誕生日だろ」

「なら、お願いしてもいいですか」


 俺は頷くと立ち上がって、コーヒーを淹れるためにキッチンに向かった。

 

「渡すなら今だな」

 

 そう思い、俺は姫香が本に集中しているのを確認すると、コーヒーを淹れる前に自分の部屋に向かってプレゼントを取ってきた。

 そして、淹れたてのコーヒーと一緒にプレゼントをおぼんに乗せて姫香の元に戻る。


「姫香。コーヒーできたぞ」


 本に集中している姫香の肩をトントンと叩く。


「ありがとう……ございます」


 すぐに俺のプレゼントに気が付いたようで、コーヒーの入ったマグカップを持つ前に姫香は俺の方を向いた。


「翔君、これはもしかして……」

「そうだよ。改めて誕生日おめでとう姫香」

「開けてもいいですか?というか、見覚えがあるのは気のせいでしょうか?」

「まぁ、それは開けてからのお楽しみってことで」


 姫香が見覚えがあるのは当然のことだった。

 だって俺が姫香にプレゼントしたのは……。


「これって……」

「そうだよ。お揃いのネックレス」

「翔君!」


 ネックレスの入った箱を手に勢いよく俺に抱き着いてきた姫香。

 その勢いに押され倒れこんでしまい姫香が俺の上に馬乗りになる形になっていた。


「翔君!嬉しすぎます!」

「喜んでくれてよかった」

「翔君とお揃いなんですよ!喜ぶに決まってます!早速つけてもいいですか?」

「いいけど、俺につけさせてくれないか?ほら、俺の誕生日の時は姫香がつけてくれただろ」

「もちろんです!お願いします!」


 姫香を抱きしめるように起き上がった俺はその手からネックレスの入った箱を受け取った。

 その箱の中からネックレスを取り出す。

 俺とお揃いの星型のネックレス。

 その真ん中にハマっている宝石は青色じゃなくて赤色だ。

 姫香の深紅の瞳に合わせてそれにした。

 そのネックレスを手に持ち姫香の首につける。 


「どうですか?」

「うん。よく似合ってるよ」

「翔君!本当にありがとうございます!一生大切にしますね!」


 そう言って姫香は俺にキスをする。

 それから、自分の首についているネックレスをうっとりとした表情で何度も見ていた。


「でも、翔君。私も同じものを買ったので分かるのですけど、これ高かったですよね」

「そうだな」

「あっ!もしかして、そのためですか!?」


 姫香は何かに気がついたらしい。

 おそらく姫香が気づいたことは当たっている。


「これを買うために翔君はバイトを始めたのですか?」

「そうだよ」

「そうだったんですね。これはますます大切にしないといけませんね。常に肌身離さず身につけておきますね!」


 そう言ってまた姫香はネックレスを眺める。

 姫香の深紅の瞳とネックレスの真ん中の宝石がキラキラと輝いていた。


☆☆☆

あとがき

 

この光景を2人(歩と真美)が薄目を開けて見ていたのは内緒の話🤫


皆さんは初めて自分で稼いだお金は何に使いましたか?

私は本を買って残りは貯金しました(笑)

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