6月1日(火)

「大丈夫ですか?」

「・・・・・・はい」


 と言いつつ、やはり疲れているのだろう。彼女は

膝に手をついて肩で息をしていた。


「もう、あいつらは追ってこないと思いますが、万が一があるのですぐに帰ることをオススメします。家は近くですか?」

「ここから・・・・・・そんなに・・・・・・離れてないです」


 その言い方からすると、どうやら彼女もこの場所に来たことがあるらしい。

 ここは俺がよく来る家の近くにある大きな公園だ。学校帰りや休日によくここで散歩をしたり、ベンチに座って読書をしたりしている。

 彼女が、ふぅー、と深呼吸をして息を整えた。そして、ゆっくりと顔をあげた。

 上目遣いで真っ直ぐ俺のことを捉えていた。その深紅の瞳の美しさに俺は思わず見惚れてしまった。


「あの、ありがとうございました」

「ど、どういたしまして」

「本当に助かりました。その、困っていたので・・・・・・」


 彼女は深々と頭を下げた。

 俺の選択は間違ってなかったみたいだな。彼女に感謝されてそう思った。


「では、俺はこれで失礼しますね。気をつけて帰ってくださいね。もし、また絡まれたら真っ先に逃げ出したらいいと思いますよ。あなたの足なら多分逃げ切れるでしょうから」


 俺は彼女に一礼をすると公園の出口に向かった。


「あの・・・・・・」


 彼女が俺の背に向かって声をかけてきた。

 まだ、何か用でもあるのだろうか・・・・・・。

 

「なんですか?」

「名前・・・・・・教えてもらえませんか?」

 

 名前ねぇ・・・・・・。

 どうせ、もう会うことはないだろうから自分の名前を言ってもいいのだが、このご時世だしな・・・・・・。


「そうですね。通りすがりのお節介焼きとでも名乗っておきます」


 ちょっとキザすぎたかな。

 彼女はきょとんとしていたが、気にすることなく俺は公園を後にした。

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