6月30日(水) 6:30〜

 昨日の朝はなんだったんだというくらい、今日の氷室さんは積極的だった。

 今日も今日とて氷室さんと一緒に登校していた。もちろん、手を繋いで、それも恋人繋ぎ。


「こうやって翔君と恋人繋ぎをするのが、ずっと夢だったんです」

「そ、そうなんだ」


 そんなことを言われてしまっては、恥ずかしくても離すことができないだろ。

 氷室さんの手は小さくてスベスベだった。

 

「大切な人と手を繋いで学校に登校する。これも、青春ですね。翔君!」

「そ、そうだな」

「この調子でどんどん青春していきましょう!」


 氷室さんはそう言って。俺の手を優しく握った。

 ゆっくりと学校に向かって歩いていく。


「6月も今日で終わりですね」

「なんだかものすごくいろんなことがあった1ヶ月だった気がするよ」


 本当にいろんなことがあった。

 そして、これからもいろんなことがあるだろう。

 

「ありましたね〜。私にとって6月は変化の月でした」

「俺もだよ」

「1番大きく変化したのはやっぱり、翔君との関係ですかね」

「そうだな。俺も氷室さんとの関係が1番大きく変化したかな」


 クラスメイトから友達になり恋人になった。こうなることを1ヶ月前の俺は予想していなかっただろう。


「あの、お願いがあるんですけど、いいですか?」


 氷室さんは立ち止まり、俺の方を向いてそう言った。


「ん、何?」

「恥ずかしいんですけど、その、名前、呼んでほしいです」

「・・・・・・名前」

「・・・・・・はい」


 名前か・・・・・・。

 そういえば氷室さんは昨日から俺のことを名前で呼んでる。

 そっか、名前か・・・・・・。 

 あの2人も名前で呼び合ってるもんな。


「ダメ、でしょうか?」

「ううん。そうだな。ごめん。気がつかなくて」

「いえ・・・・・・呼んでくれるなら私は・・・・・・」

「姫香・・・・・・」

 

 俺は小さな声で氷室さんの名前を呼んだ。

 氷室さんは嬉しそうに微笑み、すぐに恥ずかしそうに顔を逸らした。

 

「くすぐったい、ですね。でも、嬉しいです」

「そっか」


 好きな人の名前を呼ぶのってこんな気持ちになるんだな。

 恥ずかしさと嬉しさと幸せが入り混じった気持ちに包まれていた。


「行きましょうか」

「そうだな」


 再び学校に向かって歩き出す。

 学校に到着して靴を履き替えた。


「せっかく、名前で呼んでもらって申し訳ないんですが、恥ずかしいので、あの・・・・・・2人の時だけにしてもらえたら助かります」

「わ、分かった。気をつける」

「ありがとうございます」


 教室に到着した。

 それからクラスメイトが教室に来るまで氷室さんと談笑をした。

 俺は何度か氷室さんの名前を呼び、そのたびに氷室さんは恥ずかしそうにしていた。


☆☆☆

次回投稿12時!

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