第204話 新生活編part④ 新居に訪問者②
「そうですか。そうですか。翔君もしっかりと男の子なんですね」
そう言って姫香は妖艶な笑みを浮かべた。
同棲を始めてから姫香が大胆になってきている気がする。
そりゃあ、俺たちだって男と女だし、いつかは子供だって欲しいわけだし、そういう行為をするだろう。
☆☆☆
「翔もちゃんと男なんだね~」
「あーもう!この話は終わりだ!」
俺が話を終わらせようとしても、真美は勝手に話を続けた。
「なんか。翔も変わったよね。中学生の時はもっと冷たい感じだったのに、今じゃあ、姫香ちゃん大好きオーラが半端ないよね」
「たしにかに真美の言う通りだな!」
「へぇ~。そうなんですね」
完全に三対一の構図が出来上がっていた。
からかわれる俺に、からかう他三人。
「中学の時の翔はね、周りを寄せ付けないって感じだったかな。それにあの顔でしょ。周りからは『クールな王子様』なんて呼ばれてファンも多かったんだよ」
「そういえば、そんな感じだったな。中学生の時の翔は。いや、高一までそうじゃなかったか?」
「たしかに、高一まではそんな感じだったかも」
「だよな~。それがいつ間にか……」
三人が俺のことを見てくる。
「随分と丸くなったよな」
「そうなんですね。私は今の翔君と昔の翔君しか知りませんけど、そんな時もあったんですね」
「そうなのよ~。今の翔からは想像できないよね~」
「できませんね」
「ほんと、話しかけるのに勇気が必要だったんだからね」
俺に話しかけるのに勇気が必要だったと言ったが、それは嘘だ。
当時、学級委員をしていた真美が俺に一番最初に話しかけてきたのは今でも覚えている。
その時からこんな感じだった真美は何度も俺にフランクに話しかけてきた。
最初の方は無視をしていたが、そのうち歩を引き連れて俺に話しかけてくるようになり、俺は根負けした。
そして、今に至る。
「嘘つけ。臆することなく俺に話しかけてきてたくせに」
「あれ?そうだったっけ?」
そんなことどっちでもいじゃん、という風に笑う真美。
真美にとっては当たり前のことを当たり前にしただけなのだろう。
誰にでも分け隔てなく同じ態度を取るのが藤井真美という人物だった。
「とにかくさ、私は今の翔の方が好きだな~。話やすいし、一緒にいて気を遣わなくていいからね」
「だな。俺も今の翔の方が好きだな」
「私も翔君のことが大好きです!」
「姫香だけ意味が違くないか?」
「そんなことないですよ?私は翔君のことが大好きです!」
「に、二回も言わなくても分かってるから」
「もう一度言いましょうか?」
俺のことをからかって楽しんでいる姫香。
その様子を楽しそうに見ている二人。
どうやらこの空間に俺の味方は一人もいないらしい。
俺の体温が下がるまでしばらく時間がかかったのは言うまでもないだろう。
☆☆☆
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