第203話 新生活編part③ 新居に訪問者①

 大学の入学式まで一週間を切った。

 今日は俺たちの新居に来客が来ていた。

 もちろん、あの二人だ。


「ここが二人の愛の巣か~!」


 家の中に入ってすぐ開口一番に真美はそう言った。

 

「愛の巣って・・・・・・てか、その髪の毛どうしたんだよ?」

「似合ってる?」


 自分の髪の毛を触りながら俺に聞いてくる。

 真美は髪の毛を赤く染めていた。

 

「似合ってるか似合ってないかでいうと、似合ってるんじゃないか」

「ありがと!」

「綺麗な赤色で素敵ですね」

「いい色だよね!」


 いつかは二人が遊びに来るだろうと思っていたが、こんなに早く来るとは思っていなかった。

 ソファーに座る姫香と真美。

 地べたに座る俺と歩。

 この光景は二年前と何も変わらないようだ。


「なんだか、悪いな。二人の新婚生活に水を差すみたいで」

「本当にそう思ってんのか?てか、まだ新婚じゃないから」

「もう新婚みたいなものだろ」

「それを言ったらお前らの方がそうだろ」

「まぁな」


 歩と真美は高校卒業と同時に婚約した。

 そして、同棲を始めていた。

 文字通り新婚生活真っ最中だった。

 

「で、どうだ?姫香ちゃんとの同棲生活は順調なのか?」

「順調なんじゃないか?」


 ここまで、これといってケンカもなく過ごすことができていた。

 まあ、問題があるとすれば、姫香のスキンシップが今までよりも激しくなったということくらいだろうか。 

 ソファーに座っていると横に座ってきて肩に頭を乗せてきたり、突然抱きついてきたり、ほっぺをツンツンとしてきたり、こんなことは日常茶飯事になっていた。

 そんな姫香のことを思い浮かべていると頬が緩んでいたらしく、歩に「幸せそうでなによりだ!」とからかわれた。


「うっせぇ、そっちはどうなんだよ」

「それ、聞く必要あるのか?」


 歩はそう言ってニヤッと笑った。

 どうやら、愚問だったらしい。

 あの『バカップル』が順調じゃないわけがなかった。


「聞くまでもなかったな」

「まぁな」

「あんまり、ハメを外すなよ?」

「それはこっちのセリフなんだが?」


 何を思っているのか、歩はニヤッとなっていた口元をさらに深めた。

 

「何を思ってるのか知らんが、まだそういうことは何もしてないからな」

「まだ、ってことはいつかはするんだろ?」

「そりゃあ、いつかはな」

「だってさ、姫香ちゃん!」

「そうですか。そうですか。翔君もしっかりと男の子なんですね」


 そう言って姫香は妖艶な笑みを浮かべた。

 同棲を始めてから姫香が大胆になってきている気がする。

 そりゃあ、俺たちだって男と女だし、いつかは子供だって欲しいわけだし、そういう行為をするだろう。

 

☆☆☆

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