第166話 体育祭編part20 学年別対抗リレー①

  そして、体育祭最後の種目学年別対抗リレーが始まろうとしていた。


「あの時は世話になったな」


 入場門のところで二年生の列に並んでいると隣に並んでいた才津が話しかけてきた。


「あれから、いい子になったみたいですね」

「お前だろ。親父に動画を送ったの」

「何のことですか?」

「とぼけるなよ。お前の彼女が動画を撮ってただろ」

「それが何か?」

「まあいい。親父にこってりと絞られて、ああいうことはもう懲りたんだ」

「そうですか。それはいいことですね」


 才津があれからどうしているかなんて正直興味がなかった。

 

「話はそれだけですか?」

「百メートル走の走り見てたぞ。あの片桐に勝つとは思ってはなかった。お前とはいい勝負ができそうだ」


 ニヤッと笑った才津に俺は興味がないといった感じで「そうですか」と呟いた。 


「本気で走れよ?」

「まぁ、考えときます」


 二年生の列が進んだので、そこで才津との話を切り上げ入場門をくぐった。

 学年別対抗リレーは全部で十四人。一学年七クラスあり、一クラス二人が選出されることになっていた。

 おそらくは歩の仕業だと思うが俺はアンカーになっていた。

 そんな俺のもとに歩と片桐が近づいてきた。


「翔、緊張してるか?」

「歩、お前、俺をアンカーにしただろ」

「それが一番勝てると思ったからな」

「俺に何か言うことがあるんじゃないのか?」

「頼んだ!」


 悪びれる様子もなく満面の笑顔で俺の肩を叩く歩。

 そんな歩に俺はため息をついた。


「悪かったって、でも相手があの生徒会長じゃあ、勝負ができるのは翔くらいなものだろ」

「そうだぞ。俺に勝ったんだから、ちゃんとあの人も勝てよ」

「お前らなぁ……言っとくが俺の前でかなりの差ができてたら無理だからな」

「そこは俺達が頑張るさ。それに、ちゃんと選りすぐりのメンバーなんだ。そんなに差はひらかれないはずだ」

「そうかよ」


 俺はもう一度ため息をつく。


「いいじゃねぇか。姫香ちゃんにカッコいいところを見せるチャンスを作ってやったんだから」

 

 そんな俺に耳打ちで歩はそう言うとテントを方を指差した。

 そこには、期待の眼差しで俺のことを見ていた姫香と「勝ちなさいよ」と口パクで言っている真美の姿があった。


「あんなに期待の眼差しを向けてくれてるんだ。カッコいいところを見せないでどうする。期待に応えるのが彼氏の役目だろ」

「調子のいいことを言いやがって。さっき、その期待に応えられなかったのはどこの誰だ?」

「それは言わない約束だろ!今度はちゃんと期待に応えてみせるさ!」

「そうかよ」


 一番目に走る選手がスタートラインでクラウチングスタートの格好をとっていた。

 

「じゃあ、俺らは戻るな。勝とうぜ!」

「お前にしっかり繋ぐからな!」


 二人が反対側の列に戻っていくと、ピストルの音が空を裂き、一番目の選手が走り始めた。


☆☆☆

 

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