第165話 体育祭編part19 部活対抗リレー

(歩視点)

 

 お昼休憩が終わり午後の種目が始まった。

 午後の注目種目は二つ。部活対抗リレーと学年別選抜リレー。

 俺はどっちもに出場することになっていた。

 体育委員の仕事を黙々とこなしていると、部活対抗リレーの時間になった。


「歩、そろそろ時間。行くよ」

「了解」

 

 終わった種目の道具を体育館に片づけていると真美に呼ばれ、入場門へと向かった。

 部活対抗リレーは基本的に運動部が参加する。当然陸上部も参加し、優勝候補だった。


「よう!歩!」

「雄二。やっぱり出るのか」

「まぁな」


 片桐雄二。

 陸上部長距離走のエースで現全国大会記録保持者。

 短距離がメインじゃないとはいえ、そんなやつに圧勝してしまったのだがら、翔はやっぱり『凄い奴』だな。

 

「雄二と翔がいれば学年別リレーは余裕だろうな」

「それはどうだろうな。生徒会長は手強いぞ。あの人は、今は抜かれてしまったが全国大会記保持者だった選手だからな」

「そういえば、あの人は陸上部だったな」


 生徒会長才津玲人はああ見えて元陸上部員だった。

 中学生時代はそれで名が知られているくらいの選手だった。

 高校では一年でやめてしまったみたいだが、その走りは今だ健在だろう。

 三年生の選出メンバーを見た限りかなり手強そうだったが、翔の予想外の出場により、意外といい勝負ができるのではないかと思っている。


「それにしても翔のやつは本当に凄い奴だな。ぜひとも陸上部にスカウトしたいよ」

「それは無理だろうな。興味ないって言われるのがオチだろ」

「だよな。まぁそれは今は置いといて勝負を楽しもうぜ」

「そうだな。俺もお前に勝たせてもらうとするかな」

「歩が俺に?それは無理だろ」


 バカにするような笑いではなく、雄二は本音でそう思っていのだろう。自信たっぷりに笑ていた。 

 

「まぁせいぜい無様な勝負にならないように頑張るさ」

「なら、少しは期待しておくかな!」


 雄二はニヤッと笑うと手をヒラヒラと振って陸上部の列へと戻って行った。


「楽しそうね」

「そう見える?」

「ええ、ワクワクしてるんでしょ」

「さすが、真美。俺のことを何でもお見通しだね」

「あたりまえ。何年、歩のことを見てきたと思ってんの」


 そう言って誇らしげに胸を張った真美に「そうだね」と口元を綻ばせた。

 真美の言う通りだった。

 俺は雄二と競えることにワクワクしている。 

 いや、違うな。あの本気の翔と一緒に走った雄二に自分がどれだけ通用するのかを試したいんだろうな。

 

「勝てるといいわね」

「まぁ、一対一の勝負じゃないんだけどね」

「でも、彼と走る順番は同じなんでしょ?」

「うん」

「じゃあ、私が一対一で走れるようにしてあげる」

「無理はしなくていいからね」

「大丈夫よ。私はこれで最後の種目だし、少しくらいの無理は平気よ」

「怪我だけは絶対にしないで」

「分かってるわよ。ほんと、どれだけ私のことが好きなのかしらね」

「そんなの分かりきってるだろ?世界一愛してるよ」


 俺は真美のことを抱きしめた。

 世界で一番愛している俺の大事な人。

 

「私も世界で一番愛してる。だから、そんな歩のために頑張るんじゃない」


 最高に可愛い笑顔でそう言った真美のことを俺はもう一度抱きしめた。

 

「じゃあ、そんな真美のために俺も頑張るかな」


 そして、部活対抗リレーが始まった。 

 真美から綺麗にバトンを受け取った俺は二位だった。

 一位はもちろん陸上部で少し前を雄二が走っていた。

 結果から言えば、俺たちは二位でゴールした。結局、雄二には遠く及ばなかった。

 この時俺は改めて翔の凄さを実感したのだった。


☆☆☆

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