第192話 クリスマス編part14 2人でのクリスマス②

 午前十時。

 家を出た俺たちはバスに乗って隣町まで移動していた。 

 雪が積もっているせいか、隣町まで一時間もかかった。


「ここが姫香の行きたかったカフェ?」

「はい」

「めっちゃ人いない?」

「そりゃあいますよ。今日はクリスマスですから!それに、このお店のパティシエさんは世界大会で優勝されてるみたいなんですよ」

「そうなんだ」


 通りで人が多いわけだ。

 俺たちが訪れていた『夜』という名前のカフェは店の外まで行列ができていた。

 

「こんなに並んでたらケーキ買えないんじゃないか?」

「大丈夫です。ちゃんと三ヶ月前には予約済みですから」

「そんなに前から予約してたのか」

「そのくらい前から予約が取れないくらい人気のお店なんですよ」

 

 それkら俺たちは寒空の中三十分待ってようやくお店の中に入ることができた。


「当たり前だけど、満席だな」

「ですね。本当はここでお茶したかったんですけど、それはまたの機会にしましょう。ここには名物があるんですよ」

「どんな?」

「それはまた来た時のお楽しみです」


 店内はそれほど広くはなかった。

 四人が座れるテーブル席が数席とカウンター席が数席といった感じのこじんまりとしたお店だった。

 姫香がケーキの並んだショーケースの前まで行き、女性の店員さんに話しかけていた。


「すみません。ケーキを予約していた。氷室です」

「氷室様ですね。少しお待ちください」


 驚くほど美人なその女性店員はにこやかに笑うと、裏方に向かい用意していたケーキの入った箱を持って戻ってきた。


「こちらでお間違いないですか?」


 そう言って女性店員が姫香にはこの中のケーキを見せていた。

 そこには見たこともないような綺麗なケーキが二つ並んでいた。

 

「はい。大丈夫です。とても美味しそうです!」

「ふふ。ありがとうございます。そう言っていただけると主人も喜びます」

「てことはもしかして、お姉さんは獅戸翼さんの奥さんなんですか?」

「ですね。私は陽彩といいます」

「わぁっ!そうなんですね。ご夫婦でお店をやられているとか素敵です!」

「ふふ、ありがとう。私もお嬢さんのこと知ってますよ」

「えっ!?」

「この前公開された映画に出演されてましたよね?」

「バレてましたか」


 もちろん今日も姫香はバッチリと変装をしている。

 他のお客が気がついてないのに女性店員さんだけが気がついてるのは姫香が本名で予約をしたからだろう。


「名前を見たときにそうかな?と思ってたんです。あの、実は私、大ファンでよかったらサインもらえませんか?」

「もちろんいいですよ」

「ありがとう!今色紙持ってきますね!」

 

 そう言って女性店員はまた裏方に向かった。


「まさか獅戸さんの奥さんが私のファンだったとは、驚きです」

「あの店員さん以外にもこのお店の中には姫香のファンがいそうだけどな」

「バレないように気をつけないとですね。店員さんにはバレてしまいましたけどね」


 てへっと姫香が可愛らしく舌を出して戯けると、裏方から色紙を持った女性店員さんが戻ってきた。

 姫香が色紙にサインをすると、俺たちは『夜』を後にした。


☆☆☆


 気付く人いるかな〜笑

  

 

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