番外編【7月】

番外編① 7/10(土)『姫香とかき氷』

 俺は姫香と一緒に行列に並んでいた。

 並び始めて、30分経つ。

 開店前なのにこの人の列は、さすがテレビで放送されたお店だけある。

 

「それにしても暑いな」

「ですね」


 7月に入りすっかりと夏らしい天気になってきた。

 今日も気温が28℃を超えている。

 立っているだけで汗がダラダラと溢れ落ちてくるほどだ。


「でも、こんな日に食べるかき氷は絶対に美味しいですよ」

「だな」


 氷室さんの額にも汗が浮かんでいた。

 自前のピンク色の可愛らしいハンカチで汗を拭き取っていた。


「翔君も拭いてあげます。少ししゃがんでください」

「あ、ありがと」


 俺は少ししゃがんで、姫香と同じ目線になった。

 サングラスで隠れて見えないが、その奥に輝く深紅の瞳はきっと俺を見つめているだろう。

 なんでも、日差しが強くなったから、眼鏡からサングラスに変装道具を変えたらしい。


「どういたしまして。早く中に入りたいですね」

「そうだな。てか、まだ開店すらしてないんだもんな」

「ですね。でも、後数分で開店するはずなので、もう少しの辛抱ですね」


 それから、数分後にお店は開店した。

 俺たちがお店の中に入れたのはそれから10分後だった。


「生き返るー」


 お店の中は冷房がガンガンに効いていた。

 外の暑さなど一瞬で吹き飛んでしまった。


「うふふ、生き返るのは少し早くないですか?」

「それもそうだな」

「はい。これがメニュー表みたいですよ」


 姫香がテーブルの上にメニュー表を開いた。

 メニュー表はかき氷の形をしていた。


「へぇー。いろんなかき氷があるんだな」

「なんでも、数十種類あるとか」

「そんなにあるのか」


 たしかに、メニュー表は何枚もあって、その全てにかき氷の写真が載っていた。

 しかも、どれも美味しそうだ。


「姫香はどれにする?」

「んー。私はテレビで放送されてた、この1番人気の練乳いちごかき氷にしようと思ってます」

「絶対に美味しいやつだな。じゃあ、俺は果肉たっぷりメロンかき氷ってやつにするかな」

「わぁ!それも美味しそうですね!」

「半分こずつにするか?」

「したいです!」

「じゃあ、そうしよう。俺も練乳いちごかき氷食べてみたかったし」

「ありがとうございます」


 店員さんを呼んで2人分のかき氷を注文した。

 テレビ放送されたせいなのか、この暑さのせいなのか満席だった。

 俺たちの元にかき氷がやってきたのはそれから20分後だった。


「やっときましたね」

「だな。じゃあ、早速食べるか」

「ちょっと待ってください!最初は私が食べさせてあげたいです」

「ん?というと?」


 姫香は果肉たっぷりメロンかき氷をスプーンで一口掬って、俺の方に差し出してきた。

 あぁ、そういうことか。

 

「じゃ、じゃあ遠慮なく」

「どうぞ」


 姫香の差し出したかき氷をぱくっと食べた。

 果肉たっぷりというだけあって、メロンの果肉がゴロゴロと入っていた。

 噛めば噛むほど味が滲み出てきて、最高に美味しかった。

 

「美味しいな」

「じゃあ、私もいただきます」

「ん?なに勝手に食べようとしてるんだ?」

「え・・・・・・いや、私は・・・・・・」


 恥ずかしがっている姫香の前にある練乳いちごかき氷から一口スプーンで掬って、俺は姫香の口元に差し出した。


「あ〜ん」

「うぅ・・・・・・」


 姫香は恥ずかしがりながらも、かき氷をぱくっと食べた。


「・・・・・・美味しい」


 それでもかき氷の美味しさの方が勝ったらしい。

 姫香は幸せそうに頬を緩めていた。

 その後は約束通り、かき氷を半分ずつ堪能した。


☆☆☆

番外編です!

本編では描かないつもりの夏休み前の物語になってます!

先に投稿したプロローグと順序が逆になるかもなので、本編が始まったら直します!笑

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