『③王野翔の実家』

 8月15日(日)14:00〜


 お昼ご飯を食べ終えた、俺と姫香はおじいちゃんたちのお墓参りをするために墓地へ向かって歩いていた。

 

「姫香って、おじいちゃんたちに会ったことあったっけ?」

「ないですね」

「そっか」

「どんなお人だったんですか?」

「う~ん。2人とも優しい人だったよ。1人っ子だから、めっちゃ可愛がってもらったな」

「そうなんですね。私の祖父母は私が生まれる前にはもういなかったですから。なんだか、少し羨ましいです」


 そう言って、姫香は苦笑いを浮かべた。


「なんか、ごめんな」

「いえ、大丈夫ですよ」


 墓地に到着した。

 持ってきていた桶に水を溜めて、おじいちゃんたちのお墓に向かう。

 すでにお母さんたちが来ているらしく、お墓は綺麗だったが、それでも俺たちは掃除をした。

 俺は丁寧にスポンジでお墓を磨き上げた。

 姫香は地面に落ちていた落ち葉などを拾ってくれていた。

 

「だいぶ、綺麗になりましたね」

「そうだな。ありがとう」

「いえ、どういたしまして」

「線香をつけるか」


 俺はまずろうそくに火をつけて、ろうそく立てに置いた。

 そのろうそくの火を使って線香に火をつける。

 先が白くなった線香を線香立てに置いた。

 そして、しゃがんでお墓に向かって手を合わせる。

 この半年、主に六月のことを2人に報告した。


「姫香も手を合わせてやってくれ。紹介はしておいたから」

「ありがとうございます」


 姫香と場所を交代した。

 その場にしゃがみこんで、姫香は2人のお墓に向かって手を合わせてくれた。

 どんなことを話しているのだろうか。

 姫香はしばらくの間、手を合わせていた。


「何を話したんだ?」

「それは、秘密です」


 そう言って、姫香はウインクをした。

 

「自己紹介をしただけですよ」

「そっか」

「安心してください。変なことは言ってないですので」

「そこは、心配してないんだけどな」


 俺は桶に入っていた柄杓を使ってお墓に水をかけた。


「姫香もかけるか?」

「はい」


 俺は柄杓を姫香に渡した。

 それを使って姫香も水をかけた。


「それじゃあ、帰るか」

「はい」


 俺たちは家に向かって歩き始めた。


「そういえば、明日花火大会があるんだけど……」

「行きたいです!」


 姫香が食い気味に言った。


「絶対に行きます!」

「もちろんそのつもりだったよ」

「やった!明日が楽しみです!」

「そうだな」


 ちなみに明日開催される花火大会はこの辺では一番大きな規模のものだ。

 毎年、俺はこの花火大会を楽しみにしている。

 代り映えはほとんどないが、それでもやはり夜空に咲く花火を見るとテンションが上がる。 

 俺たちは花火大会の話をしながら家へと帰って行った。

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