『②王野翔の実家』


「うわぁ~。あの頃のまんまです……」


 姫香はリビングに入るなり、そう言った。

 確かに、あの頃とほとんど変化ないかもな。

 両親はあんまりインテリアに凝る方ではないし、今はこの家に年に数回しかいないから変化しようがなかった。

 もちろん、壊れたりしたものは買え換えたりはしてるけどな。


「私、戻ってきたんですね……」

「そんなに感動されると、なんだか照れくさいな」

「いろいろと見て回ってもいいですか?」

「どうぞ」


 姫香はリビングにあるものを懐かしそうに眺めていた。

 リビングにあるのは、ソファーに木製のサイドテーブルに本棚。それに大きなテレビに食事をするテーブル。

 両親はごちゃごちゃとした空間があまり好きではないらしく、よくいるリビングに置いてあるものはシンプルだ。


「このソファーもサイドテーブルも懐かしい。このテーブルで一緒にケーキを食べましたよね」

「そうだな」


 姫香は一通りリビング内を見終えると、ソファーにちょこんと座った。


「この座り心地も懐かしいです」

「実はこのソファーは一回買い換えたんだけどな」

「そうなんですか?」

「まぁ、同じものを買ったから座り心地が変わらないだろうけどな」

「そうなんですね」


 俺も姫香の隣に座ったと同時に、お墓参りに行くための道具を準備してくれていたお母さんがリビングにやってきた。


「持ってきたわよー!」

「ありがとう」


 それをテーブルの上に置くと、お母さんは冷蔵庫からビールを取り出した。


「まだ、飲むのかよ・・・・・・」

「飲むに決まってるじゃない!」

「ほどほどにしとけよ。姫香もいるんだし、さっきみたいなウザ絡みはあんまりすんなよ」

「分かってるわよ〜!」


 本当に分かっているのだろうか。

 お母さんはビールをプシューっと開けて、グビッと一口飲んだ。


「ところで、お父さんは?」

「今は、仕事場部屋に篭ってるわよ。締め切りが近いらしのよな〜!」

「そっか」

「まあ、夕方くらいには出てくるわよ」


 仕事中なら邪魔するわけにはいかないな。

 帰ってきたっていう挨拶は後でするかな。

 それから、俺たちはお昼になるまでお母さんの話を聞かされた。

 姫香は楽しそうにその話を聞いていた。

 

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