第157話 体育祭編part11
その瞬間、教室の扉がガラガラと勢いよく開いて一人の生徒が入ってきた。
「王野翔はいるか!?」
突然、名前を呼ばれてそちらを向くと知らない顔の男子生徒と目が合った。
その男子生徒はニヤッと笑うと俺たちの元に近づいてきた。
☆☆☆
「よう、雄二!久しぶりだな」
「なんだ、歩も一緒にいたのか、お前らほんと仲がいいな」
「まぁな!翔は親友だからな!」
「そうか。なら、俺は王野とライバルだぞ!」
俺のことを指差してそう言ったこの男がどうやら歩が以前言ってた片桐雄二らしい。
茶髪で人懐っこい笑顔を浮かべている片桐は歩に引けを取らないくらいのイケメンだった。
「俺はお前のことライバルと思ったことないけどな」
「なっ!?それはないだろう!王野よ。あれだけ競い合ったというのに・・・・・・」
ガクッと方を落とす片桐。
そんな片桐を見かねた歩が俺の耳元で言った。
「翔・・・・・・それはいくらなんでも雄二が可哀想だ」
「そう言われてもな。覚えてないとものは覚えてないんだ」
「覚えてなくても少しくらい話を合わせてやってくれ。根は悪いやつじゃないんだ。ただ、ちょっと熱血バカなだけで・・・・・・」
「分かったよ」
本当に覚えてないが、歩がここまで頼んでくるから仕方がない。
俺は適当に片桐の話に合わせることにした。
「あ、ああ、そういえばいたな・・・・・・」
「思い出してくれたか!我がライバルよ!」
「そうだな・・・・・・」
「いつもお前に負けてばかりだからな。今年こそは絶対に勝たせてもらうぞ!去年はどの種目にも出てなくて勝負する機会すらなかったからな」
「今年も百メートル走にしか出るつもりはないけどな」
「十分だ!俺も百メートル走には出るからな。王野は何組目に走るんだ?」
「さぁな」
「翔はラストだよ」
俺の代わりに歩が教えると片桐は「そうか」と頷いた。
「なら、俺もラストにしてもらうよう体育委員に掛け合っておくとしよう。当日が楽しみだ!」
「今年こそは勝てるといいな」
歩がニヤッと笑って片桐の肩をポンっと叩いた。
「もちろんそのつもりだ!覚悟しとけよ。王野!」
「まぁ、頑張れ」
勝負などこだわるつもりはないが、負けるつもりもなかった。
俺と勝負できると知って満足したのか、片桐は満面の笑みで教室から出て行った。
「騒がしいやつだな」」
「まぁな。さっきも言ったが悪い奴ではないから多めに見てやってくれ」
「歩がそう言うならそうなんだろうな」
実際、片桐と話した感触としては、歩が言ったように「熱血バカ」といった感じだった。
そこでようやく、中学生の時にやたらといろんなことで俺に勝負を仕掛けてくるやつがいたことを思い出した。
あれが片桐だったんだな。あいつも、昔とは見た目も体格も変わっていてすぐには分からなかった。
片桐が帰った後、すぐ昼休憩が終わった。
俺はこの時、クラスメイト達から視線を浴びていたことに気が付いていなかった。
☆☆☆
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