いよいよ体育祭!

第156話 体育祭編part10

 体育祭前日。

 いよいよ、明日、体育祭ということもあってか学校内は熱気立っていた。

 もちろん、それは俺のクラスも同様だった。

 一緒にご飯を食べていた『バカップル』もやる気に満ち溢れている様子だった。


「絶対優勝するぞー!」

「今年はいけるわよ!なんてったって、翔がいるもの!」

「そうだなー!翔がいれば間違いないな!」


 何を根拠に言っているのか分からないが、『バカップル』は俺がいれば優勝できると考えてるらしい。


「いや、お前ら俺に何を期待してるか知らんけど、俺は何もしないからな?」

「そうだった。中学生の時と違うんだった」


 露骨に残念そうな顔をする真美。

 体育祭のことよりも俺は例のことの方が気になっていた。


「そんなことより、真美。あれから、どうだ?」

「どうって?」

「あいつだよ」

「あー。才津ね。あれから一度も会ってないわよ。どうやら、理事長に内緒でいろいろとしてたみたいで、かなり怒られたみたい。才津と同じクラスの先輩が教えてくれた。そのせいか最近は大人しくなったみたいよ」

「そうか」

「一体、誰が理事長に言ったのかしらね〜」

「だよなー。不思議だよなー」


 その二人の口ぶりは答えが分かっているといった感じだった。

 まあ、その答えは俺なんだが・・・・・・。

 そんなことをいちいち報告なんかしない。

 

 例のことがあったその日に俺はあの動画を匿名で理事長に送りつけた。

 理事長の連絡先は学校のホームページに書いてあった。本来ならそういうことのために使うようなものではないのだろうが、ありがたく使わせてもらうことにした。

 正直、どっちに転ぶかは賭けだった。しかし、どうやら良い方に転んだらしい。

 

「誰なんだろうな」

「ありがとね。翔」

「何のことだ?」


 そう俺が惚けると「まぁいいわ。私たちは分かってるから」と真美が言った。


「ところで、ずっと気になってたんだが、どうしてあいつは真美に拘ってたんだ?言っちゃ悪いが、絶対に姫香の方が可愛いだろ」

「か、翔君!?いきなり何を言い出すんですか!?」


 隣で静かに話を聞いていた姫香が目を見開き俺のことを見ていた。

 俺は事実を言ったまでだが、何をそんなに慌てているのだろうか・・・・・・。

 そんな姫香と比較された真美までも「そうだね〜。私より姫香ちゃんの方が百倍は可愛いかな」と言った。


「ま、真美さんまで何を言ってるんですか!?真美さんも可愛いですからね!」

「姫香ちゃんの方が可愛いよ〜。ね、歩?」


 真美は歩と「あなたも言いなさい」とアイコンタクトを取った。

 その意味を汲み取ったのか歩も便乗して「そうだね。姫香ちゃんの方が可愛いね」と言った。


「も、もぅ!みんなして私をからかって!知りませんからね!」


 真っ赤になった頬を膨らませて、ぷいっとそっぽを巻いてしまった姫香。


「あはは、姫香ちゃんは可愛いな〜。さて、からかうのはこの辺にしといて、才津が姫香ちゃんじゃなくて、私に拘ってた理由だったわね。私も想像でしかないんだけど、たぶん仕返しをしたかったんじゃないかなと思ってる」

「仕返し?」

「翔は覚えてないかもしれないけど、才津って私たちと同じ中学出身なのよ」

「え、そうだったのか?」


 上級生になんて興味がこれっぽちもなかったから知らなかった。


「やっぱりね。それに、あいつ見た目もかなり変わってたから気がつかなくても無理はないかな。中学生の時の彼はあんなキャラじゃかったし」

「その口ぶりだと真美は中学生時代のあいつを知ってるようだな」

「まぁね。一応、同じ生徒会にいたし、話くらいはする仲だったかな」


 そういえば、真美は中学生の時は生徒会に入ってたな。3年生では生徒会長を務めていたっけ。高校になってからは歩との時間を大切にしたいとかで、生徒会には入らずにサッカーぶ部のマネージャーに専念することにしたらしい?


「それでね、私、中学生の時に才津から告白されたことがあるのよね」

「え、そうだったの!?」


 その事実に一番驚いていたのは歩だった。どうやら、歩も初耳らしい。


「うん。たぶんその時の逆恨みだと思う。告白を断った時の才津の顔はよく覚えてる。よほど私と付き合える自信があったのか、私が断ったら絶望した顔してたもん」


 中学生時代の真美と歩を知っている俺からしたら、当時もすでにこの二人の間に入る隙なんてなかったように思う。

 ケンカばかりしていた犬猿の仲の二人だったが、そこには確かに相手を思いやる気持ちが存在していた。

 才津に足りなかったのはそういうところだろうな。

 中学生時代の才津がどんな生徒だったのか知らないし、興味もないが、少しでもそっち方面に変わっていたなら、少しは可能性が・・・・・・いやないな。


「どうかしましたか?」

「いや、ほんとに仲がいいなと思ってな」

「ですね」


 俺は目の前でイチャイチャついてる二人を見て、この二人の間に入るのは誰であろうと無理だなと思った。

 その瞬間、教室の扉がガラガラと勢いよく開いて一人の生徒が入ってきた。


「王野翔はいるか!?」


 突然、名前を呼ばれてそちらを向くと知らない顔の男子生徒と目が合った。

 その男子生徒はニヤッと笑うと俺たちの元に近づいてきた。


☆☆☆

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