『⑦王野翔の実家』

 寝巻きに着替えた姫香が戻ってきたのは、それから15分後だった。

 水色の可愛らしいパシャマを着た姫香は1人本を読んでいた俺の隣の席に座った。


「あれ、お父様は?」

「仕事に戻ったよ」

「そうなのですね」

「だから、本を読んでた」

「もしかして、翔君が本を好きなのってお父様の影響ですか?」

「もしかしなくてもそうだな。幼い頃からそばにはずっと本があったからな」


 お父さんの仕事部屋にも俺の部屋にも、このリビングにも、この部屋の至る所に本が置いてある。

 両親が2人とも本好きだからな。

 なんなら、トイレにまで置いてある。


「読みたい本があったら、遠慮せずに読んでくれていいからな」

「見てきてもいいです?」

「いいよ」


 姫香は席から立ち上がると、リビングにある本棚のところへと向かった。

 

「翔君。ここに、お父様が書かれた本はあるんですか?」

「そこの1番上にずらっと並んでるのがそうだよ」

「え!?これ全部ですか!?」

「うん。それでも、一部だけどね」


 姫香が驚くのも無理はない。

 お父さんはこれまでに50冊以上の本を出しているのだから。


「左から出した順番に並んでるから読むなら1番左から読むのがいいかも」

「分かりました」


 姫香はお父さんの本を取り出して、隣の席に戻ってきた。

 それからしばらく姫香と読書をしていると、ソファーで眠っていたお母さんが起き上がった。

 

「ん〜。よく寝た〜」

  

 お母さんが起きた頃には日付を越えようとしていた。


「今何時〜?」

「もうすぐ0時になるな」

「あら、そう。あなたたちは何をやってたの?」

「読書です」

「あ、その本は昇さんのやつね!」

「はい。読ませてもらってます」

「いいわね〜。どんどん読んじゃってね!」


 じゃあ、私は自分の部屋に戻るから、と言い残しし、お母さんはリビングから出て行った。


「俺たちも寝るか?」

「う〜ん。もう少し読みたいです」

「じゃあ、もう少しだけ読書するか」

「はい!」


 それから俺たちは午前一時過ぎまで読書をして、ベッドに横になった。

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