第246話 番外編『愛愛傘』

 番外編なので時系列がおかしいですがご了承ください🙇‍♂️


☆☆☆


 六月某日。

 梅雨真っ只中。

 今日も朝から雨が降っていた。


「それにしてもよく降りますね」

 姫香は窓の外を眺めながら言った。

「ほんとにな。毎日毎日嫌になるな」

「ですね。せっかくの休日がこれではどこにも行くことができませんね」

「まぁいいんじゃないか。まったりしよう」

「そうですね。まったりしましょうか」


 そう言って姫香は俺の腕に抱き着くと肩に頭を乗せてきた。

 俺は気にせずに読書をする。  

 二年生になり、姫香が俺の家に来ることが多くなった。

 休日だけに限らず平日もほとんど毎日のように俺の家に来ている。

 

「あ、でも、お買い物は行かないといけません。昨日、食材を全部使ってしまったので」

「そっか。じゃあ、もう少し雨が弱まったら行くか」

「はい」

 

 雨が少し弱まるまで俺たちはまったりとした時間を過ごした。

 特に何もしてないこの時間ですら、姫香と一緒なら幸せだった。

 

☆☆☆


「雨の日の良い点はこうして翔君と相合傘ができるところですね」

「そうだな。肩濡れてないか? 大丈夫か?」

「大丈夫ですよ」


 雨が少し弱まったので俺たちは相合傘をしてスーパーに向かっていた。

 俺の家から一番近くのスーパーまで徒歩で十分。

 この雨の強さなら相合傘をした状態でも大丈夫だろう。

 

「翔君こそ肩濡れてないですか?」

「俺も今のところは大丈夫だな」

「それならよかったです。いつだったか、私を濡れないようにしてくれて、翔君の肩がびしょ濡れになっていたことがありましたから」

「そういえば、そんなこともあったな。あの時、姫香にめっちゃ怒られたっけ」

「そりゃあ、怒りますよ。あの時翔君、次の日に風邪をひいたじゃないですか。それもかなり高熱が出てて、私心配だったんですからね」

「悪かったって。もう、あんなことはないようにするから」


 あの時は怒らせて、泣かせて、心配させて、姫香に多大な迷惑をかけてしまった。

 それ以来、相合傘をする時は大きめの傘を使うようにしている。

 二人が入っても大丈夫なサイズのやつだ。


「別に風邪を引くこと自体は人間なので仕方ないことだと思いますけど、自分を犠牲にするのはやめてくださいね? 翔君は少しだけそういう節がありますから」

「分かってるって」

「本当に分かってるんですか?」


 姫香はジト目を向けてきた。

 ジト目を向けられるのも仕方のないことだった。

 姫香に怒られてからも俺は何度か自分を犠牲にしているのだから。

 たとえ怒られたしても俺が姫香のために体を張るのをやめるつもりはなかった。

 

「分かってるよ。でも仕方ないだろ。姫香が傷つくくらいなら俺が傷ついた方が良いって思ってしまうんだから」

「その気持ちは嬉しいですけどもっと自分を大事にしてください。私を守るために翔君が傷ついてしまったら、私は悲しいですからね?」


 綺麗な深紅の瞳に見つめられて俺は顔を逸らして空を見た。


「雨、止んだみたいだな」

「むぅ、話を逸らしましたね。絶対またやるつもりですよね」

「どうだろうな?」

「その言い方が絶対にまたやるって物語ってます」

「本当に気を付けるよ。ただ、姫香に何かあった時くらいは俺に守らせてほしい」

「どうやらその意志は固いみたいですね」

「そうだな」

「分かりました。それじゃあ、ちゃんと私のことを守ってくださいね。王子様」

「あぁ、ちゃんと守るよ」


 どうやら雨はすっかりと止んでしまったようだ。

 まだ空は薄灰色の雲に覆われて、ところどころ雲の間から日の光が顔を出していた。

 このまま梅雨が終わってくれればいいのに。

 そんなことを思いながら俺たちは手を繋いでスーパーへと向かって行った。



☆☆☆


 久しぶりにこの二人を書いたけど、こんなテンション感でしたっけ?笑

 今後も時たま更新していくので、楽しみに待っていていただけると嬉しいです✨

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