第245話 ソフトクリーム

「ここに来るの久しぶりですね」

「そうだな」

「あのソフトクリームまだ売ってますよ」

「みたいだな。せっかくだし食べるか?」

「ですね。美姫ちゃんも食べる?」

「うん! 食べる!」


 美姫が元気よく頷いた。

 姫香と一緒に水着を買いに来てから十年の月日が流れていた。

 翔と姫香の間には二人の子供が産まれていた。

 今年六歳になる美姫と一歳になる翔斗。 

 美姫は姫香似で翔斗は翔似だった。

 

「美姫はイチゴ味がいい~!」

「蜂蜜のやつの方が美味しいぞ?」

「イチゴがいい!」

「そっか。じゃあ美姫はイチゴ味な。姫香は?」

「蜂蜜にします」

「了解」

 

 蜂蜜ソフトクリームを二つとイチゴソフトクリームを一つ注文した。

 出来上がったソフトクリームを受け取ると空いている席に座った。


「美味しそう~! 食べてもいい?」

「いいですよ」

「いただきま~す!」


 大きな口を開けて無邪気な顔でソフトクリームにかぶりつく美姫。

 そして口の周りに大量のソフトクリームをつけていた。


「ほら美姫ちゃん。お口についてますよ」


 口の周りについたソフトクリームを姫香がカバンからポケットティッシュを取り出して拭いた。


「ママありがとう〜!」


 そう言ったそばから美姫はまたソフトクリームにかぶりついては口の周りに付けて、また姫香が拭き取る。

 それを食べ終えるまで繰り返していた。

 そんな様子を翔は微笑ましそうな顔で眺めていた。それだけで幸せな気持ちになれるから子供って不思議だ。


「美味しかったか美姫?」

「うんっ!」

「よかったな」


 美姫の頭を撫でると満面の笑みが返ってきた。それで翔はさらに幸せな気持ちになった。


「翔君。頬が緩みっぱなしですよ」

「美姫が可愛いからな」

「ですね。本当に可愛いですね」


 どうやら二人とも親バカになってしまったようだ。自分の子供(美姫と翔斗)が可愛くて可愛くて仕方がなかった。

 

「もう小学生になるんだよな」

「早いですね」

「あっという間に大人になるんだろうな」

「ですね。私たちもうかうかしてたら、あっという間におばあちゃんとおじちゃんになってしまいますね」

「想像したくねぇな」

「いつかは辿る運命ですから」

「まぁな」

「これからも一緒に子供の成長を見守っていきましょうね」

「そうだな」


☆☆☆

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る