第244話 愛してるゲーム【大人編】
「パパ〜。愛してるゲームしよ〜」
書斎で小説を書いていると美姫がそう言いながら部屋に入ってきた。
「また懐かしいゲームを持ち出したな」
言い出したのは姫香だろう。
美姫が『愛してるゲーム』なんて知っているわけがないし、幼稚園生(美姫の友達)がそんなことを言うわけがないと思った。
「ママから聞いたのか?」
「うん!」
(このくらいの年頃の子供はなんでも興味持つんだから)
何教えてんだよと呆れながら入口の方に視線を移すと、姫香がひょこっと顔を出していた。
「美姫。パパと愛してるゲームやりたい!」
純粋無垢な笑顔でそう言われては翔は頷くしかなかった。
「一回だけだからな」
「うん!」
美姫は元気よく頷くと翔の膝の上にちょこんと座った。
どっちが先に言うのかと順番を決める間もなく美紀が翔のことを見上げて言う。
「パパ。大好き!」
愛娘からストレートに好意を伝えられて照れない
親は世の中にいないだろう。
それは翔も然りで、愛娘(美姫)に好意を伝えられた翔は頬をこれでもかと綻ばせていた。
本来ならこれでゲームは終わりなのだが、そんなこと美姫が分かるわけもなく、「じゃあ次はパパの番ね」と満面の笑みを向けてきた。
早く早くとその純愛な深紅の瞳が言っている。
そんな美姫の頭を優しく撫でると翔は「パパも美姫のこと大好きだよ」と言った。
すると美姫は嬉しそうにえへへと笑って姫香の元へと走っていった。
そのまま美姫は嬉しそうに自室に向かい、姫香が代わりに部屋の中に入ってきた。
「美姫ちゃんの時は一回で照れるんですね」
明らかに拗ねた声だった。
頬も少しだ膨らんでいる。
「拗ねてるのか?」
「拗ねてません!」
分かりやすく拗ねてるので、バレバレなのだが姫香は認めたくないようだった。
「ただちょっと悔しいなと思っただけです」
「やっぱり拗ねてるじゃん」
そんな姫香が可愛くて翔はからかうように言った。
「うるさいです! 今なら絶対に一回目で翔君のことを照れさせますから!」
「ふ〜ん。じゃあ、もう一回やるか?」
「やります!」
というわけで、翔と姫香は高校生以来の『愛してるゲーム』を行うことになった。
もちろん先攻は姫香だ。
翔を照れさせる何かいい案があるのか姫香は余裕そうな表情だった。
「私だって成長してるんですから。高校生の時のようにいくと思ったら大間違いですからね」
そう言った姫香は大胆に、しかし少し恥ずかしそうに頬を赤くして翔の体にその豊満なそれを惜しげなく密着させた。
「あ、愛してます。翔きゅん」
普段あまりやらないことをやったせいか姫香は可愛らしい噛んだ。
そんな可愛らしいところを見せられて、照れないなんて不可能だ。それはずるいだろ、と思いながら翔は頬を緩めた。
「それは反則じゃないか?」
翔がからかうようにそう言うと姫香は翔のむねに頭をぐりぐりとして恥ずかしそうにしていた。
耳まで真っ赤になっている。
「・・・・・・恥ずかしすぎます」
そんな姫香を見て愛おしさが溢れてくる。
本当に何歳になっても姫香は可愛いし、歳を取るごとに姫香への愛おしさが増していく。
翔は恥ずかしがっている姫香のことを抱きしめた。
「母親としてがんばってる姫香も、俺のために可愛くいようとしてくれている姫香も、慣れないことをして照れている姫香も、テレビに映っている姫香も、どんな姫香も愛してるぞ。何歳になっても姫香を愛し続けるよ」
そう言いながら翔は姫香の頭を優しく撫でた。
姫香は顔を少し上げて翔のことを見つめると「バカ」と小さく呟いた。
それから二人は美姫が「私もママとパパとぎゅぅってする〜」と部屋に入ってくるまで抱きしめ合っていた。
☆☆☆
大事なところで噛んでしまう姫香ちゃんでした笑
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