6月3日(木) 12:00〜

 昼休憩。

 俺は『バカップル』2人と一緒にご飯を食べていた。

 氷室さんは朝言っていた通り、仕事らしくお昼休憩になってすぐ教室から出ていった。


「それにしても本当すげぇよなぁー。氷姫」

「氷室さんな」

「だよねー。氷姫ちゃんとは住む世界が違うって感じー」

「だから、氷室さんな」

「なんだよ翔。やけにこだわるな」

「いやいや、普通のことだろ。そんな変なあだ名じゃなくて、ちゃんと名前で呼んでやれよ。可哀想だろ」


 自分でも何言ってんだって感じだった。

 だけど、口が勝手に動いていた。

 しょうがないだろ、教室を出て行く時の氷室さんの寂しげな顔を見たら、言わずにはいられなかったんだから。

 せめて、俺の友達くらいは彼女のことを名前で呼んでほしいと思った。


「もしかして、惚れたのか?」

「そんなんじゃねぇよ」

「なーんだ。つまんないのー。翔と氷室ちゃんなら、お似合いだと思うんだけどなー」


 バカップルが俺をからかってくる。


「は? どういう意味だよ?」

「二人が付き合いだしても、不思議じゃないって話」

「どっからそんな発想が出るんだよ」

「もし! 付き合うことになったら、ちゃんと教えてよね!? ダブルデートするんだから!」

「しないし、付き合うとかないから」

「そんなのわかんないじゃんー。人生にはいろんな可能性があるんだよ!」


 絶対にありえないって・・・・・・。

 俺が氷室さんとお似合いだって? 

 それは氷室さんが可哀想ってもんだ。

 めんどくさがり屋の俺と努力家の氷室さんじゃ釣り合わねぇよ。


「真美の言う通り、人生何が起きるか分かんないからね」

「二人が付き合ったみたいにか?」

「そうそう。て、ちがうわー!?」


 歩のノリツッコミ。

 さすが、バカップルのツッコミ担当。キレがいいな。

 そんな、仲のいいバカップルも昔はこんな感じではなかった。二人が俺の中学生時代を知っているように、俺も二人の中学生時代のことを知っている。


「いや、誰もが思ってたと思うぞ。あの犬猿の仲の二人が付き合ったってな」

「犬猿の仲だから付き合ったっていたのもあるけどな。ほら、言うだろ。ケンカするほど仲がいいってな」


 少しだけ、二人の話をしよう。 

 中学生時代の二人はそれはそれは仲が悪かった。いや、もしかしたら仲が良かったのかもしれない。

 とにかく、中学生時代の『バカップル』は顔を合わせるたびに喧嘩という名の言い合いを繰り返していた。中三の時なんて同じクラスだったから、それはもう止めるのが大変だった。

 

「とにかく、俺と氷室さんが付き合うことはねぇよ」

「どうかなー? ねぇ、真美」

「そうだねー。歩」


 『バカップル』は意味深なアイコンタクトをしてニヤニヤと笑っていた。

 絶対にないよ……。 

 たぶんないよ……。

 ない、よな……?

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