6月4日(金) 7:00~『聞きたいこと』

 今日も俺は朝七時に学校にやってきていた。

 俺が教室のドアを開けると、俺が来るのが分かっていたのか、氷室さんと目が合った。


「おはようございます。王野さん」

「おはよう、氷室さん」


 今日は氷室さんから挨拶をしてくれた。

 なんか、少し嬉しい。自分の席に座りながらそんなことを思った。

『氷姫』じゃなくて『陽だまり姫』が俺に微笑みかけている。

 天使かよ!

 その顔は姫を通り越してもはや天使だった。 

 てか、相変わらず早いな……。

 べ、別に氷室さんに勝ちたいとは思ってないが、一応聞いてみようかな……。


「氷室さん、一つ聞いてもいい?」

「なんでしょうか?」

「氷室さんっていつも何時に学校に来てるの?」

「そうですね。特に決めてはいませんが6時30分から7時の間くらいには来てますかね」


 マジか。

 あんまり変わらないじゃねぇか……。

 もう少し早く起きて、自転車を飛ばせば、氷室さんに……。

 ダメだ、ダメだ、脳が『バカップル』の考えによってきてる。


「氷室さんって自転車?」

「いえ、歩きです」

「そうなんだ」


 歩きってことは学校から近いんだろうな。

 ちなみに俺は自転車通学だ。

 自宅から学校までは自転車で大体15分くらい。

 もちろん、雨の日は自転車で行くのは面倒なので、バスを使っている。


「ところで、なんでそんなことを?」

「単なる興味本位だ。あんまり気にしないでくれ」

「そうですか」


 氷室さんは不思議そうに首を傾げた。

 まぁ、本人はなぜそんなことを聞かれたのか不思議だろうな。

 特に意味はないんだけどな……。氷室さんより早く教室に来たいなんて少ししか思ってないし。


「あの、質問に一つ答えたので私も一つ質問、というか聞きたいことを聞いてもいいですか?」

「どうぞ」

「やった!」


 ん? 

 なんか今可愛らしい声が聞こえたが、気のせいか?

 氷室さんが勉強していた手を止めて俺の方に歩いてきた。そして、俺の机の前にしゃがみこんで机の上に顔をちょこんと乗せた。

 その角度は……。

 氷室さんの綺麗な深紅の瞳が俺のことを見上げていた。


「どうかしましたか?」

「いや、な、なんでもない」

「そうですか。では、私が聞きたかったことを聞きます。ようやく、聞くことができます!」


 え、なになに、怖いんだけど……。

 俺、氷室さんに何を聞かれるんだー!

 

「あ、あの、私と……」


 そこで、廊下に響く大きな足跡。

 お、今日は昨日より早いな……。


「もぅ! なんで……。わ、私は席に戻ります!」

「あ、あぁ」


 あれ? 

 なんかこれ既視感があるな……。

 氷室さんは悔しそうに頬を膨らませて自分の席へと戻っていった。

 そして、教室に入ってきたのは、なんと真美だった。

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