『⑤氷室姫香の実家』
昼食におはぎを食べた後は、ダラダラと過ごしていた。
姫香と一緒に本を読んだり、肩を寄せ合って寝たり、テレビを見ながら雑談したり、そうこうしているうちに時間は過ぎていき、夕方になった。
「そろそろ、お父さんが帰ってくる頃です」
「なんか、緊張してきた」
「大丈夫ですよ。お父さんは翔君もこと知ってますから」
「そうなんだけどな。一応、会ったことあるし・・・・・・でもな・・・・・・」
やはり緊張はする。
言ってみれば、これは顔合わせみたいなものだ。ここで、どれだけ姫香のお父さんに認めてもらえるかで、今後の姫香との関係性は大きく変わってくるだろう。
ガチャというと音と「ただいま」という声が玄関の方から聞こえてきた。
「あ、帰ってきたみたいです」
心の準備もままならないまま、姫香のお父さんが帰ってきたらしい。
「翔君。いつも通りで大丈夫ですから。そんなに緊張しなくても・・・・・・むしろ、お父さんと接したら拍子抜けするかもしれませんよ?」
「それは、どういう・・・・・・」
姫香に意味を尋ねようとしたところで、リビングの扉が開いて、姫香のお父さんが入ってきた。
「おかえりなさい。お父さん」
「ひ、ひ、姫香〜!!!」
手に持っていたカバンを床に放り投げて、姫香のお父さんは「会いたかった〜」と叫びながら、姫香に抱きついた。
「もぅ、今日はやめて。翔君もいるんだから」
「え!?翔君が!?」
姫香お父さんは驚いたように目を丸くして、隣にいた俺のことを見た。
「おー!大きくなったなー!」
「お、お久しぶりです」
「カッコよくなったなー!」
そう言って姫香のお父さんは俺の肩をバシバシと叩いてきた。
「ほんとに懐かしいな~。何年ぶり?」
「十数年ぶりですね」
「そっか。あの頃はまだこんなに小さかったのにな~」
姫香のお父さんは昔を思い出すかのように微笑んでいた。
「もう、舞香には会ったのか?」
「うん。午前中には来てたから」
「そっか。今は、仕事中か?」
「だと思う。もうそろそろ、夕飯の時間だから下りてくると思うけど……」
その時、ちょうどリビングの扉が開いて舞香さんが姿を現した。
「あら、声が聞こえると思ったら、やっぱり帰ってきてたのね!おかえり、雄二さん」
「ただいま」
「さっさとご飯作っちゃうわね~。姫香。手伝いなさい~」
「はーい」
姫香と舞香さんがキッチンへ向かうと、雄二さんは着替えてくると、リビングを後にした。
1人取り残された俺は読みかけだった小説を最後まで読むことにした。
最後まで読み終わった頃に雄二さんがリビングに戻ってきた。
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