6月12日(土) 15:00〜

 試合終盤、最終局面。

 エースストライカーの主人公が怪我で倒れた。

 もう誰もがそこで試合は終わったと思っていたその時、仮面をつけた1人の選手がピッチの傍に現れた。


「あ、あなたは・・・・・・」

「私はただのお節介焼きですよ。監督、私を試合に出してくれませんか?」


 監督は迷った末、その男を試合に投入する指示を出した。


「監督、ありがとうございます。必ずこのチームに勝利を捧げますよ」

「誰だか分からんが、期待しとるぞ」


 監督は仮面の選手が誰だか気づいてはいなかった。しかし、1人だけ、仮面の選手が誰なのか気づいてる人物がいた。それは、マネージャーだった。彼女だけは、気づいていた。なぜなら、仮面の選手が言った『ただのお節介ですよ』という言葉に聞き馴染みがあったからだ。


「あの、頑張ってください」


 仮面の選手は静かに頷いて、ピッチの中へと入って行った。

 そして、仮面の選手がボールを持った瞬間、誰もがその華麗なボール捌きに目を奪われた。気がつけば、ゴールネットにボールが突き刺さっていた。

 その瞬間、湧き上がる選手たち。

 ゴールを決めた仮面の選手は自陣のベンチに向かう。


「どうでしたか?私のゴールは?」

「す、凄かったです!」

「ただのお節介焼きにならなくてよかった」

「むしろ、スーパースターです!」


 その後の試合は、仮面の選手が全てを持っていった。仮面の選手はもう1ゴール決め、その試合に見事勝利した。


「おつかれさまでした!」


 マネージャーが仮面の選手にタオルとスポーツドリンクを手渡した。


「ありがとう。あの、後でお話があります」


 仮面の選手はマネージャーの耳元でそう言った。


「・・・・・・うん。分かった」


 マネージャーは照れ臭そうに頷いた。


「はい、カット!」


 監督がそこでカットをかけた。


「いいね!めっちゃいいよ!」

「そ、そうですか?」

「うん!バッチリ!プレイも最高だし、セリフもちゃんと言えてる!このまま、最後までいっちゃおう!」


 スタッフたちが、最後のシーンのセットを始めた。


「王野君。めっちゃ上手だったよ!」

「本当に、よかった?」

「うん!最高!」


 他の誰に言われるよりも、氷室さんにそう言ってもらえると安心する。


「ありがとう。氷室さんにそう言ってもらえると安心するよ」

「最後も頑張ってね。わ、私も頑張るから!」


 氷室さんは照れ臭そうにそう言った。

 そりゃあ、照れるよな。言う側の俺も恥ずかしいのに、俺を聞いて返事を言う側が恥ずかしくないわけがない。

 さて、気合を入れますか。

 噛まないようにしないとな・・・・・・。

 せっかく言うなら、きちんと決めたい。

 気合を入れ直し、俺はラストシーンの体育館裏へと向かった。


☆☆☆

長かった土曜日編もそろそろ終盤です!!笑

この後も引き続きお楽しみください☺️

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る