6月12日(土) 14:30〜
一通り通しでセリフを言って、それを何度も繰り返した。
「へぇ~。だいぶ様になってるね。これなら大丈夫そうだねー」
「監督。見てたんですか?」
「最後の方だけね」
「監督が来たってことは準備ができたってことですか?」
「そうだよー。二人とも来て」
監督に言われるがままに俺たちはバスに乗り込んだ。
「来たねー。彼氏君」
バスの中には唯香さんをはじめ数人のスタッフがいた。
「じゃあ、彼氏君はこれを着てね。あと、これね」
そう言って手渡されたのは、主演の男が来ていたのと同じ色のユニフォームとピエロの仮面だった。
「その仮面をつけて出てもらうから。それなら、顔バレしないでしょ」
「本気ですか?」
「あたりまえ」
監督の目は真剣だった。どうやら本気で言ってるらしい。
「というか、本当に俺が出ても大丈夫なんですか?」
「今更何言ってるの。もう、君が登場する前のシーンは撮っちゃったから、やめるなんて無理だよ。それに、面白ければ何でもいいからね~。私としては、仮面の男が、幼馴染でマネージャーに恋してるって展開はありだと思ってるから!」
いきなり仮面をかぶった選手が登場して、本当に大丈夫なのか?
そんな不安が頭に浮かんだが、話はどんどんと進んでいき、いつの間にか俺は着替えさせられていた。
「さ、残り時間もあんまりないし、さっさと始めちゃおう~!」
監督に背中を押され、バスから出る。
そして、俺と氷室さんで映画のラストシーンの撮影が始まった。
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