6月5日(土) 14:00〜
氷室さんに案内されるままに向かった先は服屋だった。
「服屋か」
「はい。私の行きつけです」
今話題のトップモデルの氷室さんの行きつけの服屋。
敷居たけぇー。服に興味がない俺が来るとかじゃないだろ。
「さ、入りましょう!」
「お、おう」
氷室さんの後に続いてお店の中に入る。
カランカランという音とともに、店員さんの「いらっしゃいませ」という声。
俺は店内のお洒落な雰囲気に圧倒されそうになった。店内には数人の客がいた。みんな、俺と違ってオシャレだ。
なんか、場違いな気がしてきた・・・・・・。
「場違いなんかじゃないですよ」
「そ、そうか?」
「はい。王野さんはシンプルな服装でもオシャレに見えます。羨ましい限りです」
「いやいや、シンプルな服装なんて誰でも似合うだろ」
「それが、そうでもないですよー。シンプルって意外と難しいですから」
氷室さんが言うのならそうなんだろう。
トップモデルに褒められて俺は少し上機嫌になった。
「王野さんはどんな服装をした女性が好きですか?」
「そうだな。ファッションに詳しくないからなんとも言えないが、強いて言うなら大人っぽい服装かな」
「大人っぽい服装ですか・・・・・・」
氷室さんはあごに人差し指を当てて、店内を見渡した。
そして、一人納得したように頷くと振り返った。
「今から、ファッションショーをするので、王野さんの好きな服選んでもらえませんか?」
少し腰を曲げて上目遣いで頼まれれば断れるはずもないだろう。
俺は「分かった」と頷いた。
氷室さんは「よかったです」と両手を合わせると、
「服選んでくるので試着室の前で待っててくれませんか?」
と言い残して、服を選びにいった。
俺は氷室さんに言われた通り、店の奥にある試着したの前に移動した。
カップルばっかり・・・・・・。
試着室の前には楽しそうに服を選びあっているカップルがたくさんいた。
氷室さんも彼氏と一緒に来たりするのだろうか・・・・・・。ん? 待てよ。もしそうなら、俺って・・・・・・ヤバくね? もしも、氷室さんに彼氏がいたら、俺、ヤバくね・・・・・・。どうか、鉢合わせしませんように。
「何してるんです?」
俺が天に向かって拝んでいるところを氷室さんに見られてクスクスと笑われてしまった。
そんな、氷室さんのカゴの中には大量の洋服が入っていた。一体、何回ファッショーするつもりなんだ?
「私は着替えてきますので椅子にでも座って待っててください」
「あの・・・・・・」
「彼氏いないのか?」と聞こうとしたが、氷室さんはそそくさと試着室の中に入っていってしまった。
俺の中で選択肢が生まれた。
1.このまま残る
2.氷室さんには申し訳ないが帰る
「いや、どう考えても1だよなー」
俺は椅子に座り、試着室のカーテンが開くのを待った。
そんな心配をしていた翔だか、それは意味のないことだった。なぜなら、氷室姫香に彼氏などいないのだから。それどころか・・・・・・。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます