6月5日(土) 14:00〜『氷室姫香目線』

 私の中に今、選択肢が三つあった。


1. グレーのフーデットコートにネイビーブラウスにグレーパンツ。


2. ノーカラージャケットに白ブラウスにネイビーフレアスカート。


3. 白ジャケットにグレーニットキャミソールに黒デニム。


 さて、どれから着ようかな。

 王野君は大人っぽい服装が好きって言ってたから、大人っぽい服装を中心にしてみたけど・・・・・・。

 うーん。迷う〜。

 私がこんなに悩んでるのにはもちろん理由がある。


 好きだから。


 一目惚れだった。 

 あれで、恋に落ちない人いる?  

 いやいや、いないよね!?

 あの時は本当に困っていた。そんな時に現れた彼は王子様に見えた。お節介焼きな王子様。私にとっては救世主。本当に嬉しかった。


 私が有名になって一番困っているのはナンパだった。

 ちゃんと眼鏡をかけて変装しているのに、何故だか声をかけられる。一歩でも街を歩けば、結構な頻度で声をかけられるから、最近はあんまり出歩かないようにしていた。


 あの日は、ちょうど仕事帰りだった。

 いつもならマネージャーに家まで送ってもらうのだけど、あの日は王野君に手を引っ張られて逃げ込んだ公園に寄って帰ろうと思って歩いて帰ると言ったのだ。

 それが、間違いだった。まさか、あんな住宅地でもナンパされるなんて、思ってもいなかった。


 これは、結果論でしかないかもしれないけど、もしあの日、歩いて帰ると選択をしなかったら、王野君に助けてもらうこともなかったんだと思うと、あの日、歩いて帰る選択をしたのは正解だったのかもしれない。


 王野君のことを好きになったのはあの日だった。だけど、それ以前から、王野君のことは気になってはいた。

 あれだけ、同じ時間を共有していて気にならないわけがない。

 いつも一人静かに本を読んでいる王野君。声をかけていいのか、迷っていつも遠慮していた。本当はずっと何の本を読んでいるのか気になっていた。私も本を読むことが好きだから。


「よし、決めた!」

 

 最初はこれでいく!

 私はあの日、王野君に2度目の一目惚れをした。

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