6月5日(土) 13:00~『氷室さんとデート!?』
俺は今、待ち合わせ場所である最寄り駅である人が来るのを待っていた。
その連絡が来たのは昨日の夜のことだった。
『明日、一緒にお買い物に行きませんか?』
俺はそれを見て目を丸くした。
これって、デート……だよな?
ここで俺の中で選択肢が生まれる。
1.行くと返事を返す
2.行かないとやんわり断る
いろいろ考えた結果、俺は1を選択した。
めんどくさいという気持ちより、氷室さんと休日に出掛けることに興味があった。正確にはトップモデルがどんな休日を過ごしているのが気になった。
ファンや記者にバレたら面倒なことになるのは確定なんだろうけど、それよりも好奇心が勝ってしまった。
それに、氷室さんのことだ。ちゃんと変装くらいしてくるだろう。
現在時刻は12時50分。
ということで、俺は今、氷室さんが来るのを待っていた。
空は灰色の雲に覆われていた。
「雨、降らないといいんだけどな……」
この時期は天気が変わりやすいからな。一応、折り畳み傘は持ってきているが使わなくて済むのが一番だな。
そんなことを考えながら待っていると、氷室さんは13時ちょうどにやってきた。
「お待たせしました」
駅から出てきた氷室さんは、さすがトップモデル、めっちゃオシャレだった。
白のロングシャツ。その上に黒のジャケットを羽織っていて、ベージュのワイドパンツを履いている。足元は黒色のヒール。
着こなしは完璧で大人っぽい。
てか、変装まったくしてなくね?
変装らしい変装は眼鏡をかけているくらいだった。
マジか。これで街を歩くのか?
俺、大丈夫かな……。
「どうかしましたか?」
「変装、しないんだなと思ってさ」
「してるじゃないですか!」
そう言って、氷室さんは眼鏡をくいっと上げた。
その奥に輝く深紅の瞳は楽しそうに俺のことを見ていた。
「バレたりしない?」
「全然大丈夫ですよ……その、ナンパにはよくあいますけど」
だろうな、と思った。
制服姿の氷室さんも、もちろん美人だが、私服姿の氷室さんは、その比にならないくらい美人だった。
俺たちは駅前にいたのだが、行きかう人たち男女問わず、一度はこっちを見ていた。その中には何度も見ている人もいた。
「今日は大丈夫だと思いますけど……」
「ん、何か言ったか?」
「いえ、なんでもないです。それより、そろそろ行きませんか?」
「そ、そうだな。で、どこに行くんだ?」
「それは、私に任せてください!」
ちゃんと計画を立ててきたらしい氷室さんは自信満々にそう言った。
うん。及第点だな。ちゃんと計画を立ててきてくれて有難い。時間は有限だからな。あまり無駄な時間を過ごすのは好きではない。
「じゃあ、行きましょうか」
氷室さんが満面の笑みを浮かべてそう言った。
その笑顔は灰色の空を吹き飛ばしそうなほど眩しかった。
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