『⑤4人でプール』

 満足するまで上級者コースのプールで泳ぐと俺たちは、ここの目玉であるウォータースライダーに向かった。


「それにしても凄いですね!あんなにスイスイ泳げるなんて」

「そうか?姫香も練習すればそれくらいはできるようになると思うぞ」

「無理です無理です!私には水泳は向いていません」

「そうかな?俺はできると思うけどな。姫香はもともと運動神経いいんだから、泳ぎ方を覚えればすぐにいろんな泳ぎができるようになると思うけどな」


 実際、泳げないと言っていた姫香だったが、ものの数分で25メートルをバタ脚で泳げるようになっていた。

 

「そう、ですかね?」

「やる気があるなら教えるからいつでも言ってくれ」

「分かりました。気が向いたら、お願いします」


 ウォータースライダーに到着し、俺たちは列の最後尾に並んだ。

 さすがに目玉ということもあって、人が結構並んでいた。


「ウォータースライダー楽しみですね!」

「怖くないのか?」

「うーん。怖いですけど、翔君がいるから大丈夫です!」


 姫香は自信たっぷりに胸を張ってそう言った。

 もちろん、姫香に危険な目をあわせるわかないのだが、こうも自信たっぷりに言われると、言われる側としては少し照れくさいな。


「守ってくれるんでしょ?」

「まぁ、守るけど・・・・・・」


 姫香とダラダラと話をしてると列は進み、順番が回ってきた。


「姫香が前でいいよな?」

「はい」


 姫香を足の間に座らせた。


「じゃあ、いくぞ」


 流されないように掴んでいた手すりから手を離して、俺たちはウォータースライダーを滑り始めた。

 思った以上に水の流れが早くて、気を抜くと一瞬で体を持っていかれそうだった。


「きゃー!こ、怖いです!」


 姫香がそんな悲鳴を上げながら、俺にしがみついてきた。

 むにっと柔らかな感触が布2枚越しに伝わってきて、そっちを耐えるのも大変だったが、それどころではなかった。

 水の流れはどんどんと速くなっていく。

 次第に体勢は崩れ、俺の上に姫香が乗る状態となった。

 そのままゴールまで滑り落ちていく。

 バシャン!と水飛沫をあげながら、俺たちはプールに着地した。


「だ、大丈夫か?」

「・・・・・・はい。なんとか」


 そう言った姫香の顔は満身創痍気味だった。

 きっと、俺も同じ顔をしているだろう。


「思ったより速くて怖かったな」

「ですね・・・・・・もう、乗りたくないかもしれません」

「姫香は絶叫系の乗り物は苦手?」

「あんまり、好んでは乗りませんね」

「そっか。付き合わせて悪いな」

「いえ、楽しかったのは楽しかったですから」


 姫香は力無い笑顔で笑った。

 その後は2人と合流するために俺たちはフードコートへと向かった。


☆☆☆

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