6月27日(日) 20:00〜『真美さんとの電話(姫香視点)』

 仕事を終えてお風呂から上がると、真美さんから電話がかかってきた。

 

『もしもし~!』


 真美さんはいつも元気だが、今日は何だかいつもより元気な気がした。


「もしもし」

『姫香ちゃん!お仕事お疲れ様!』


 どうして、真美さんが、私が今日お仕事だったことを知っているのだろうか。

 日曜日は仕事っていうのは

王野君にしか言ってないはずなんだけど。

 もしかしたら、王野君と会っていたのかもしれない。ということは、おそらくあのことも伝わっているだろう。

 だから、いつもより点テンションが高いのかな。


「ありがとうございます」

『ところで、姫香ちゃん~。翔に告白したんだって?』


 やっぱり……。

 真美さんはいきなり本題を話し出した。


「王野君から聞いたんですか?」

『うん!今日のお昼に翔と一緒にご飯食べてたからね~』


 私は昨日、王野君に告白をした。

 そして、王野君の返事を聞く前に逃げ出してしまった。

 正直に言うと、返事を聞くのが怖かった。

 自信がないわけではなかった。約1ヶ月、王野君と接していればさすがに気が付く。王野君が私に好意を抱いているこということは。それでも怖かった。もしかしたら……万が一があったら……。だから私は返事を聞く前に逃げ出した。

 今は少し後悔していた。


「あの……王野君は……何か言ってましたか?」

『それは私の口からは言えないな~』

「そう、ですよね……」

『うん。ごめんね。だけど、悪い結果にはならないってことだけは言っとく』

「……そうですか」


 真美さんのその言葉は私の心を少しだけ軽くした。

 それから数拍おいて、真美さんが言った。


『姫香ちゃん、よく頑張ったね。誰かに好きの気持ちを伝えるのってものすごく勇気がいるよね。私も歩に告白したときめっちゃ怖かったもん』

「真美さんでもそうだったんですね」

『そりゃあね。でもそれ以上に好きの気持ちが止まらなかったんだけどね』


 真美さんは、あはは、と笑った。

 

『姫香ちゃんもそうでしょ?』

「……はい」


 真美さんの言う通りだった。

 もう、我慢できなかった。私の気持ちを王野君に伝えたかった。

 だから、私は告白をすることを決意した。でも返事を聞く前に逃げたした。


「でも、私……」

『大丈夫。姫香ちゃんはいつものように翔に接してあげて。心配することなんて、何1つないんだから。だって翔は……おっと、これ以上は明日のお楽しみ!』

「それは、どういう意味ですか?」

『それよりさ、姫香ちゃんたちはいつも何時に学校に行ってるの?』


 真美さんは露骨に話を逸らした。


「えっと、6時30分くらいですかね」

『えっ!早すぎじゃない!』

「そうですか?」

『うん。早すぎ!私なんてその時間、まだぐうぐう寝てるよ!眠くないの?』

「もう、私は慣れてしまいましたね。それに……」


 王野君と一緒に過ごすためですから。というのは真美さんには言わなかった。


『6時30分か~。6時30分……。起きれるかな……』


 真美さんは何やらぶつぶつとそう呟いていた。


「あの、真美さん?」

『あ、ごめんね。ちょっとこっちの話』

「そうですか」

『じゃあ、もしかしてそろそろ寝る?』

「そうですね」

 

 私はテーブルの上の置時計を見た。

 時計の針は21時になろうとしていた。


『そっか。じゃあ、私も寝ようかね~。また明日ね!おやすみ』

「はい。また明日。おやすみなさい」


 真美さんとの電話を終えた私はベッドに飛び込んだ。

 明日、王野君とどんな顔をして会えばいのだろうか。真美さんはいつも通り接してあげて、と言ったけど、まともに王野君の顔を見れる気がしなかった。

 そんな気持ちを抱えながら私は目を瞑った。

 

☆☆☆

次回更新18時!

 

残り2日……。

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