6月10日(木) 12:00〜

 お昼休憩。

 屋上にて、なぜか俺は目の前に座っている『バカップル』にバカ笑をされていた。

 

「もういいだろ。そんなに笑うなよ」

「だって、面白いじゃんか!あの翔が照れてたんだぜ!」

「見たかったなー!それ!どんな顔してたんだろうなー」

「お二人とも、もうその辺にしといてあげてください。王野さんが可哀想です」

「はーい!氷室ちゃんがそう言うならやめますー!」


 まったく、氷室さんの言うことは聞くのかよ。

 なぜ俺が笑われてたかというと、どうやら朝のあのやりとりを歩に見られていたらしい。

 気にせずに入ってくればいいものを、余計な気を回して入らなかったそうだ。

 てか、なんだか氷室さんが『バカップル』と意気投合してるように見えるんだが?


 最近は氷室さんと普通に話しているから、忘れがちだけど、彼女は『氷姫』って呼ばれるほど人への対応が冷たい人なんだぞ?朝、俺と話す時はあんなんだが、俺以外の生徒と話してる時は、遠くにいても分かるくらい、氷室さんは冷たい空気を醸しだしている。それに、俺以外の生徒とこんなに話すことはない。せいぜい、一言や二言でみんな話を終わっている。

 だから、不思議なんだ。氷室さんがこの2人と話していることが。


「2人ともいつの間に氷室さんと仲良くなったんだ?」

「聞きたい?」


 真美がニヤッと笑ってそう言う。

 

「いや、いい」

「では、発表します!」

「いや、いいって言ってるだろ」

「またまた〜!本当は知りたいんでしょ?」

「翔って意外と顔に出やすいもんね」

「そうそう!さっきも、こいつら何いつの間に俺の氷室さんと仲良くなってんだ、って私たちのこと見てたし!」

「おいっ!」

「なに〜?違った?」

「氷室さんも何とか言ってやってくれ、このふざけてる『バカップル』に」


 そう言って、隣に座っている氷室さんのことを見ると、顔から湯気が出そうなくらい真っ赤になっていた。


「翔をからかうのはこの辺にしとこうかな。氷室ちゃんが可哀想だし」

「俺じゃなくて、氷室さんかよ」

「いや、だって・・・・・・隣見たら分かるでしょ」

「まぁ、な」


 そりゃあ、これだけ顔を真っ赤にされてたら、俺でも分かる。

 何が、とは言わないけどな・・・・・・。


「とりあえず、今日の目的の話しないか?」

「そうだねー。氷室ちゃん、大丈夫?」

「は、はい。大丈夫です」


 と言いつつも氷室さんの顔はまだほんのり赤く、心ここに在らずって感じだ。

 

「それじゃあ、始めよっか!氷室ちゃん青春会!」

「おー!たくさんやりたいこと言うぞー!」

「わ、私も言います!」

「氷室さんが言わないと始まらないんだけどな」

「そうだよー!これは氷室ちゃんのための会なんだから」


 そうなのだ。今日はそのために屋上でご飯を食べることになっていたのに、何故か俺がからかわれることになっていた。

 そんなわけで、俺たちは昼休憩が終わるまでいろんな青春らしいことを挙げていった。

 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る