6月29日(火) 6:30〜

 氷室さんの彼氏になった翌日、俺は氷室さんと一緒に登校していた。

 氷室さんの要望で一緒に行くことになっていた。

 俺からも提案しようと思っていたので、二つ返事で要望を受け入れた。


「こうして2人で学校に行くのって、久しぶりですね」

「そうだな」


 前回は確か、俺が風邪をひいた次の日だったか。

 あの時は氷室さんの看病にすごく助けられたっけ。


「いいですねこういうの。青春って感じがします!」


 氷室さんは嬉しそうに呟いた。


「青春か・・・・・・」

「どうかしましたか?」

「いや、きっとこれからいろんな青春を経験するんだろうなって思ってな」

「そうですね〜。一緒にいろんな青春を経験していきましょうね!」


 そう言って氷室さんは微笑むと俺の手を握ってきた。

 こうやって、大切な彼女と手を繋いで一緒に学校に行くってのも青春の1個だよな。

 そう思いながら、俺は氷室さんの手を握り返す。

 

「100個くらいは青春を経験したいです!」

「100個もいけるかな〜」

  

 俺は苦笑いを浮かべた。


「きっと、100個なんてすぐですよ!」


 氷室さんは自信満々にそう言った。

 こんなささやかなことですら青春を感じるのだから、案外100個なんてすぐなのかもな。


「かもな」

「なのです!100個以上を目指しましょう!」


 なぜか100個以上になってたが、気にすることはなかった。

 それから手を繋いだまま教室まで向かった。 

 早朝の学校は誰もいない。だからこうして、手を繋いで登校しても他の生徒にバレる心配はなかった。

 今のところ俺と氷室さんが付き合っていると知っているのは、あの2人だけだった。他の生徒は仲のいい友達くらいにしか思ってはないなだろう。


「なんだか緊張しますね」

「そうだな」


 教室に入り、自分たちの席に座った。

 なぜだろう。今までと状況は変わらないはずなのに、ものすごく緊張するのは。


「私たち、恋人になったんですよね」

「・・・・・・うん」

「今までは普通に会話できていたはずなのに、意識すると・・・・・・」

 

 氷室さんの言いたいことは分かる。

 関係が幼馴染から恋人に変わっただけなのに、どうしてこんなにも緊張してしまうのだろうか。

 一昨日までできていた会話が2人ともぎこちなかった。

 お互いがどんなことを話そうかと考えて、何も言えなくなってむず痒い感じ。

 

「おかしいですね」

「あの2人も付き合い始めはこんな感じだったのかな?」

「かも、しれないですね。そう考えると、昨日の私・・・・・・うぅ・・・・・・」


 氷室さんは昨日の大胆な行動を思い出して1人悶絶していた。 

 

「完全に浮かれてました。ごめんなさい」

「いや、気にしなくてもいいんだけどな。そういうことをするような関係になったわけだし」

「そう、ですよね・・・・・・でも、やっぱり、恥ずかしぃ・・・・・・」


 氷室さんは耳まで真っ赤にして机に伏せてしまった。

 それからしばらく氷室さんが顔を上げることはなかった。


☆☆☆

次回更新18時!

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