6月28日(月) 12:00〜

 今朝、氷室さんと恋人同士になった。

 俺が氷室さんの彼氏になったという実感は、正直まだはなかった。

 きっとこれから少しずつ実感が湧いてくるんだろうと思う。

 例えばこんな風に……。


「翔君。あ〜ん」

「いや、自分で食べれるよ?」

「食べてくれないのですか?」

 

 氷室さんはそう言って上目遣いに俺を見つめてくる。

 俺たちは屋上で昼食を食べていた。

 『バッカップル』は今日は一緒ではなかった。

 朝の一件を反省して、たぶん、遠慮したのだろう。

 もしかしたら、いてくれた方がよかったかもしれない。そう思うほど、氷室さんはぐいぐいと攻めてきた。

 

「た、食べるよ」

「どうぞ」


 氷室さんの差し出した卵焼きをパクッと食べる。

 うん、美味しいんだけどね。

 距離感どうした?

 氷室さんは俺の腕にピタッとくっつくように座っている。

 いつもなら、もう少し離れてたんだけど・・・・・・。


「あの、氷室さん、近くない?」

「いえ?近くないですよ?」

「いや、近いから!」

「ダメ、ですか?」

「いい、けど・・・・・・」

「じゃあ、問題ないですね!」


 いや、問題はあるよ?

 いろいろと・・・・・・。

 肩が触れ合ってるし、髪の毛からいい匂いが漂ってくるし、弁当どころじゃないんだけど。


「翔君」

「はい」

「ありがとうございます」

「え、何が?」

「その、私の告白を受け取ってくれて、ありがとうございます」

「いや、むしろ、お礼を言うのは俺の方だよ。こんな俺なんかに告白してくれてありがとう。氷室さん」

「こんな俺、なんて言わないでください。翔君はすっごく素敵な人なんですから」


 そう言って、氷室さんは俺のほっぺたをツンツンとしてきた。


「優しくて、頼りになって、面倒見がよくて、困ってる人を見捨てない、そんな翔君のことを私は好きになったんです。だから、またそんなこと言ったら、怒りますからね!」


 氷室さんはぷくっと頬を膨らませる。

 思わぬ褒め言葉と氷室さんの想いを聞いて、胸の奥が熱くなった。

 褒めらたら、褒め返さないといけないよな。


「俺も好きだぞ。氷室さんの頑張り屋なとことか、最高に可愛い笑顔とか、自分の気持ちに素直なとことかな」

「そ、そんなに褒めないでくださいっ!!は、恥ずかしぃ・・・・・・」

「いや、先に褒めてきたのは氷室さんだろ?」

「私はいいんですっ!翔君を褒めたいんですから!でも、私を褒めるのは禁止ですっ!」


 顔を真っ赤に染め上げた氷室さんはそっぽを向いてしまった。

 しかしその場からは動こうとはしなかった。それどころか、腕を組んできた。

 

「えっと、なんで、さりげなく腕を組んでるんだ?」

「反撃ですっ!だから、黙って腕を組まれてください!」


 反撃って・・・・・・。

 可愛いかよ!?

 俺はそれがおかしくて、クスッと笑ってしまった。


「な、なんで笑うんですか!?」

「いや、可愛いなと思ってな」

「もぅ〜!また・・・・・・」


 お昼休みの終わりを知らせるチャイムが鳴った。

 俺たちの物語はこれから始まる。

 きっと今日はまだ序章に過ぎない。

 氷室さんとどんな思い出を作ろうか。

 これからの未来を想像すると楽しみで仕方がなった。

 俺は立ち上がって、氷室さんに手を差し出した。

 その手を氷室さんがしっかりと掴むと、俺たちは手を繋いだまま屋上を後にした。



☆☆☆

次回更新14時!


残り1日・・・・・・。


『行きつけのカフェの看板娘の天使様に彼氏のフリをしてほしいと頼まれました』も更新中!

現在11位✨

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