第190話 クリスマス編 part12 四人で過ごすクリスマス・イブ⑥

「よし、じゃあプレゼント交換しよ~!」


 ショッピングモールから帰ってきて、さっそく真美はプレゼント交換会を始めようとした。

 

「それはもう少し後からでもいいんじゃないか?それよりもちょうどおやつ時だからケーキにしないか?」


 時計の針はもうすぐ十五時を指そうとしていた。

 もしもまた去年みたいに一人何個もケーキを食べないといけない量のケーキを買ってきているのなら、今のうちに一個でも減らしておきたいという考えだ。

 今食べれば、夜にもう一つくらいなら食べれるだろうからな。


「そうですね。先にお茶にしませんか?」

「姫香ちゃんがそう言うならそうする!」


 相変わらず姫香の言うことなら素直に聞く真美。

 

「ならさ、ケーキを食べながらプレゼント交換もしようよ!」

「いいですね。そうしましょうか」

「決まりね!私、ケーキ取って来るね!」

「あ、私も行きます」


 美少女二人がキッチンのところにある冷蔵庫に向かい、ケーキのは箱と人数分のお皿とフォークを持って戻って来た。

 

「さ!姫香ちゃん!好きなの選んでね!」

 

 そう言って真美はケーキの箱を開けた。

 箱の中には予想通りというか、予想を裏切らないというか、色とりどりのケーキがパッと見でも十種類以上は入っていた。


「た、たくさんありますね」

「一人四個は食べれるよ!」

「去年より一個増えてる……」

「当たり前!今年は四人だからね!」

「それでケーキの数を決めてるのかよ」


 だから、去年は三個だったのか。

 少しだけ腑に落ちた気がした。

 まあ、買い過ぎには変わりないんだけどな。

 四個も食べるのは無理だから、残ったものは二人に持って帰ってもらうことにしよう。

 明日は、明日で姫香とケーキを買いに行く約束をしてるからな。


「頼むから来年からは一人、一個にしてくれ」

「えー。そりゃじゃあ、好きなケーキ選べないじゃん!」

「なら、来年は一緒に買いに行きましょう」

「それいいね!姫香ちゃん!」


 ナイスアシストをした姫香は俺に目配せをしてきた。

 これで、来年からはこんなに大量のケーキが家にやってくることはなくなるだろう。


「来年のことは今は置いておいて、どのケーキを食べるか選ぼうよ!」


 そんな真美の一言に俺たちは頷いて、それぞれが好きなケーキを選んだ。

 俺はショートケーキ、姫香はモンブラン、歩は抹茶ケーキ、真美はフルーツタルトをそれぞれの皿の上に乗せた。


☆☆☆


「さて、ケーキも選んだことだし、プレゼント交換しようよ!」


 どうやら真美はよほどプレゼント交換がしたいらしい。

 まだ、ケーキにフォークを入れてないのに、そう言ってきた。


「分かったよ。やるか。プレゼント交換」


 俺がそう言うと「やったー!」と真美は子供の用にはしゃいでいた。


「で、どっちからする?」

「じゃあ、私たちからしてもいい?」

「姫香はいい?」

「はい。私は大丈夫ですよ」

「じゃあ、私たちからね!」


 そう言って、真美は部屋の隅に置いていたラッピングされた箱を二つ持ってきた。


「はい。二人とも、メリークリスマス!」


 箱を受け取った俺は、姫香に開けるように言った。

 姫香が丁寧にラッピングをはがして中の箱を開けた。

 すると、中には可愛らしいガラスでできた綺麗な赤色のグラスが入っていた。


「これって……」


 そのグラスを手に取った姫香は俺の方を見る。

 俺は姫香に苦笑いを返した。


「俺たちのプレゼントも渡してもいいか?」

「うん!」


 同じく、部屋の隅に置いておいた二人に渡す用のプレゼントを取りに行って、俺は二人に手渡した。


「開けてもいい?」

「もちろんです」


 姫香が頷き、真美がラッピングを綺麗にはがし、中の箱を開けた。


「えっ!?どうして……」

「似た者同士なんだろうな」

「こんな偶然ってある!?」

「ですね。私も驚いてます」


 まさか。二人も同じ物を選んでいたとは、誰も思うまい。

 俺達が選んだプレゼントと『バカップル』が選んだプレゼントは色は違うものの同じカラスでできた綺麗なグラスだった。


「こんなの一生大事に使うに決まってるじゃん!姫香ちゃんとおそろいなんだよ!ありがとう!」


 今にも涙を流しそうなほど喜んでいる真美は姫香に抱き着いた。


「私も大切に使いますからね」


 姫香も姫香で嬉しそうに笑ってた。


「もしかして、仕込んだか?」

「なわけないだろ。本当に偶然だよ」

「そっか」


 このプレゼント交換に関しては俺は一切何もしていない。

 姫香が自ら選んだ。だからこれは、紛れもない奇跡だ。

 俺達四人は運命の赤い糸でつながっているのかもな。

 そのことが嬉しかったのは、これから先もこの関係を継続していきたいと思っているからだろうか。


☆☆☆

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