第212話 新生活編part12 翔の誕生日

〈姫香視点〉


 翔君の誕生日当日。

 朝から真美さんたちが家にやってきて、すぐに山崎さんが翔君を外に連れ出してくれました。


「さ〜て、準備に取り掛かりますか!」

「ですね!」


 私たちはまず部屋の飾り付けをした。

 リビングにパッピーバースディーのバルーンを飾り、風船をたくさん膨らませ、バラの花をサイドテーブルの上に置いた。

 それだけの作業で既に30分は経過していた。


「姫香ちゃん、私ケーキもらってくるね!」

「はい。お願いします。私はその間に料理を作っておきます」


 真美さんを玄関まで見送ると私は料理作りに取り掛かった。


〈翔視点〉



「で、どこへ行くつもりだよ」

「いいからいいから!ついてこいって!」


 どこに連れて行くつもりなのか、俺は今、なんの連絡もなしに家にやってきた『バカップルのツッコミ担当』と外を歩いていた。

 歩に家から連れ出されてかれこれ十分。

 ただブラブラと家の近くを歩いているだけだった。


「何も目的がないなら家に帰りたいんだけど・・・・・・」

「ちゃんと目的はあるって!」

「だったらその目的を教えろよ」

「もうすぐ着くから、そう焦るなよ」


 と言いつつ、それから十分ほど歩かされて到着したのは商店街の中にあるゲームセンターだった。


「さ、ここでひまを潰そうぜ!」

「俺は帰る」

「待ってくれて!今帰られると俺が真美に怒られる」


 踵を返して帰ろうとした俺の腕に、泣きつくようにしがみついてくる歩。

 

「はぁ、分かったよ。少しだけだからな」

「あんがと!これで怒られなくてすむわ!」


 三人が何かを隠していることは薄々気がついているが、それには何も触れずに俺は歩と一緒にゲームセンターの中に入って行った。


☆☆☆


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る