第231話 大学編part31 学園祭④

「やばかったなー!」

「ですね!」


 体育館を後にした俺たちはそのまま大学を後にして、近くのカフェにやってきていた。

『SIN&REI』の一言で言えば最高。

 もっと言えば超最高だった。

 初めの第一声からずっと終始鳥肌が立ちっぱなしだった。

 透き通るような歌声と、心に響く歌詞と、心躍るメロディーと、全てが完璧にマッチした曲。

 二人の曲はまさにそんな感じの曲だった。


「てか、アーティストのライブって初めて行ったけど凄いな。生で聞くと全然違ったものに感じるな」


 事前に姫香と曲の予習をしていた時にイヤホン越しに聞いたものと、ライブでの生の歌声とでは、かなりの差があるように感じた。 

 もちろん、イヤホン越しでもあの透明感のある歌声は健在なのだが、なんというか、生で聞くと、本当に水のような透明感だった。


「私もライブって初めて行きましたけど、もうすでにまた行きたいって思うほど楽しかったです!しかも、あの一体感がいいですよね!」

「そうだな。あの感じはライブならではだろうな」


 ステージ上に二人が俺たちに向かってマイクを向け、それに応えるように俺たちが声を揃えて歌う。

 その時の一体感はなんと表せばいいのかわからないくらい凄いものだった。

 その場に集まった観客たちの熱量をビリビリと肌で感じていた。


「また、機会があったら行きたいですね!」

「そうだな。倍率凄そうだけどな」

「それは、頑張って当てるしかありませんね!」

「頑張っても当たるもんじゃないだろ」

「それでも、当てないとです!来年の一月に武道館でライブがあるらしいので!」

 

 おそらく、あの二人はこれからどんどんと人気になっていくはずだ。そうしたら、あの二人のライブのチケットの倍率は何十、何百倍となっていくだろう。

 そう思ったら、今日、見れて本当にラッキーだったかもしれない。

 俺たちは物凄く貴重な体験をさせてもらったのだと改めて感じた。

 そう思い注文していたココアを口にすると、突然「あの、すみません」と声をかけられた。

「なんですか?」と声のした方を向くと、そこに立っていたのは、さっきまで俺たちが感動していた張本人達だった。

 

「・・・・・・」


 あまりの突然に俺は咄嗟に何も言えずに視線を姫香の方に向けた。

 それは姫香も同じようで口に両手を当てて驚いていた。

 手に持っていたカップを落とさないように、心を落ち着かせるようにお皿の上に戻す。

 そして、これは現実か?と思いながら二人のことをもう一度見た。


「ごめんなさい。驚かすつもりはなかったんだけど、心介がどうしても話しかけたいっていうから」

「いやいや、玲羅だって、話かけたいって言ってただろ」

 

 間違いない。 

 『SIN&REI』だ。 

 二人は特に変装らしい変装はしていなかった。二人ともコートを羽織っていてラフな格好をしていた。

 REIは少し大きなサングラスをしているだけで、SINはキャップ帽をかぶっているだけだった。

 どうしてこんなとこに?

 なんで俺たちに話かけてきた?

 いろんな考えた頭に浮かんだが、とりあえず、何か返事をしないとと思い俺は「さっきのライブ最高でした」と言った。


「あれ、君たちあの大学の生徒?じゃあ、俺たちが誰か分かってる?」

「は、はい・・・・・・」

「そっか〜!ライブ、聞きにきてくれてありがとな!」


 歌声とは違う、おそらくは地声でそう言って笑ったSIN。


「そ、それでお二人が俺たちに何か用ですか?」

「あ、そうそう!あなた、氷室姫香ちゃんだよね!?」


 そう言ったのはREIだった。

 姫香はかなり緊張した様子で、「は、はい・・・・・・」と頷いた。


「やっぱり〜!私ね、姫香ちゃんの大ファンなの!握手してくれない!?」

「は、はい・・・・・・」


 REIの差し出した手を姫香がまるでロボットかのようなぎこちない動きで握った。


「やば〜!嬉しすぎるんだけど!神〜!」

「なんだか、その喜び方懐かしいな!」

  

 ガチガチに緊張している俺たちなのに対して、二人は楽しそうだった。

 やがてREIが姫香の手を離すと、


「ごめんね〜。急に声かけて驚かせちゃったね」


 と、コートのポケットから二枚の紙を取り出した。


「これ、あげるから許してね!」


 そう言って俺たちに渡してきたのはまさかのチケットだった。

 しかもそれは姫香がさっき言っていた武道館のライブのプレミアが付きそうなチケットだった。


☆☆☆


大学生編次回でラストです!

この二人が誰なのかは別の小説を読んで頂ければわかります!笑

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