エピローグ

 6月1日は俺たちが再会した日。

 そして、俺たちが籍を入れた日でもあった。

 

 パタパタと元気な足音をさせて一人の女の子が仕事中の俺の元に近寄ってきた。


「お父さん!これ読んで〜!」


 姫香そっくりの笑顔でそう言ったこの女の子は王野美姫。

 俺と姫香の自慢の子供だ。


「ちょっと待ってな。ここだけ書いちゃうから」

「分かったー!」


 無邪気な笑顔を作り、俺の隣にちょこんと座った。

 そして、俺の作業をジーっと凝視してくる。

 何でも興味のあるお年頃なのだ。

 俺が何やってるのか気になるのだろう。

 そんな美姫の視線を受けながら、俺は急いで残りを書き上げていく。


「よし、終わったぞ」

「じゃあ、読んでくれる?」

「うん」

「やったー!」


 パッと笑顔の花を咲かせて「はいっ!」絵本を俺に渡してくる美姫。 

 その小さな手から本を受け取ると、美姫を自分の膝の上に座らせて、絵本の読み聞かせを始めた。


「むかし、むかしあるところにおじいさんとおばあさんがいました・・・・・・」

 

 美姫は行儀良く俺の読み聞かせを聞いてくれている。

 この歳にしてしっかり者なのはきっと姫香に似たんだろうな。

 容姿もそっくりだし。

 そんなことを思いながら美姫の頭を撫でた。


「お父さんのなでなで好きー!」

「そ、そうか?」

「うんっ!」


 何一つ汚れのない笑顔で俺のことを見上げてくる美姫。

 

「美姫は本当に可愛いな〜」

「えへへ、私可愛い?」

「うん。可愛いよ」

「やったー!」


 可愛いと褒められて嬉しそうな美姫と頭を撫で続ける俺。 

 そして、そんな俺たちのことをキッチンで料理を作っていた姫香が微笑ましそうに見ている。


「美姫ちゃん。料理できたからお皿運んでくれる?」

「はーい!」

 

 呼ばれた美姫は姫香の元へと向かって行った。

 美姫がお皿を、姫香が料理を運んできた。


「翔君はすっかりと親バカになってしまいましたね~」


 料理をテーブルに置きながら姫香がそう言った。


「可愛いんだからしかたないだろ」

「ふふっ、その気持ちは分かりますけどね」


 美姫が持ってきたお皿に料理を取り分けていく姫香。


「ほんと姫香にそっくりだよな~。なんだか、子供の頃の姫香を見てるみたいだよ。髪の長さは違うけど」

「誰かさんそう思ってたみたいに美姫が男の子と間違われたら困りますからね」

「誰だそれ?」

「翔君ですよ!」

「あの時は大変失礼しました」


 俺は姫香に頭を下げた。

 姫香がそう言ったように、美姫は髪を伸ばしていて女の子らしい見た目だった。

 あれからもう二十年以上が経つのか、となんだか感慨深い気持ちになった。


「まぁ、いいんですけど。結果的に今もこうして一緒にいることができてるのですから」

「そうだな」

「これからもよろしくお願いしますね?」

「当たり前だろ」

「もうすぐ、二人目も産まれますからね」


 そう言って姫香は大きくなったお腹を優しく撫でた。


「もうそろそろだっけ」

「はい。来週が一応予定日です」

「まだどっちか教えてくれないのか?」

「産まれてからのお楽しみです!」


 美姫の時も産まれるまで性別がどっちなのか姫香は教えてくれなかった。

 なので、産まれた子供が女の子だと知ったのは、初めて顔を合わせた時だった。

 

「まぁ、どっちでも姫香に似て可愛い子になるのは確定してるんだろうけどな」

「分かりませんよ。翔君に似てカッコいい子になるかもしれないじゃないですか?」

「てことは男の子か?」

「さぁ~。どうでしょう~?」

「引っ掛からなかったか」

「引っ掛かりませんよ~」


 なんてことを俺たちが話していると、お腹が空いて我慢できなくなったのか美姫が「ご飯食べないの?」と催促してきた。


「そうね。食べよっか」

「うんっ!」

 

 俺の前の席に姫香、その隣に美姫が座った。

 三人で声を合わせていただきますをしてお昼ご飯を食べ始めた。

 家族が一人増え、来週にはもう一人増え、守るものがどんどんと増えていく。

 と、同時に幸せも増えていく。

 この幸せな時間を守るために、目の前で楽しそうに笑っている二人の笑顔を守るために、今日も俺は物語を紡いでいくのであった。



                                 了

☆☆☆


 これにて「クラスの有名モデルの氷姫を助けたら好きオーラが半端ない!?」一旦終了になります!!!

 ながらく(約半年間)ご愛読いただきありがとうございました!

 本当に感謝感激です。

 まさか、ランキングに載る(二位)とは思ってなかったし、保存数が5000を超えるなんて想像もしてませんでした。

 こんな拙い文章と構成力な私の物語を最後まで応援していただきありがとうございました。

 

 これにて、完結! 

 だと思いましたか?(笑)

 

 もちろん、まだまだ三人、いや四人のお話は続きます!(笑)

 まだまだ書きたい話がありますからね!

 ただ、毎日投稿ではなくなると思います。

 そこはご了承ください。

 

 これからも夜空星龍の小説の応援をよろしくお願いします。

 もっともっと面白い話をたくさん書くぞー!!!

 

 

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