6月18日(金) 12:00〜
やっぱりこうなった。
でも、こうなると分かっていて、俺は氷室さんと一緒に教室に入ることを選んだんだから、これは仕方のないことだった。
俺は今、『バカップル』にからかわれていた。
「それにしても、まさか一緒に登校してくるなんてね〜」
「だよな〜。ビックリしたわ!」
「昨日、姫香ちゃんに翔の家の場所教えてって言われた時は、様子を見に行くんだろうなとは思ってたけど、まさかね〜」
「俺に渡していた合鍵が役に立ったな」
「そうだな。思ってたけど形とはかなり違ったがな」
俺は1人暮らしを始める際に歩に合鍵を渡していた。同じ高校に進むことが決まっていたし、歩なら渡してもいいと思ったからだ。一応、親友だと思っているしな。
もちろん、合鍵を渡した理由は、俺がこうなった時のためだった、のだが・・・・・・まさかこんな形で合鍵を使われる日が来るとは思ってもいなかった。
「山崎さん。合鍵、ありがとうございました」
氷室さんが歩にお礼を言って、スカートのポケットから俺の家の合鍵を出した。
「それ、氷室さんが持っててよ」
「え?」
「どうせ、俺が持ってても使わないし、というか、使う機会1回もなかったし。翔、高校生になってから、1回も風邪ひかなかったからな〜」
「一応、気をつけてはいたからな。昨日はひいたけどな」
「それに、男の俺に看病されるより、氷室さんの方がいいだろ?いままではそういう相手がいなかったから、俺が仕方なく持ってたけど、今は違うみたいだし〜」
歩がニヤニヤとした顔でそう言ってくる。
こいつには俺たちの関係はどう写っているのだろうか。
「でも・・・・・・」
氷室さんはどうしたらいいのか、と俺のことをチラチラと見て、俺の答えを待っている。
「分かったよ。歩より氷室さんの方が優しく看病してくれそうだしな」
実際、もの凄く優しかった。
「素直じゃねぇな〜。翔は」
そう言って、歩はお腹を抱えて笑った。
「だってさ、氷室さん。ということですその鍵はお願い。翔がまた風邪ひいた時は看病してやってあげてほしい」
「じ、じゃあ、ありがたく受け取っておきます」
氷室さんは俺の家の合鍵を大事そうに胸の前で抱いた。
「あ〜あ。翔も罪な男だね〜。姫香ちゃんにこんな可愛い顔をさせるなんて」
「見てるこっちも溶けそうなんですけど〜」
「うっせぇ」
氷室さんが俺のあの鍵を抱いた時のあの顔は好きな人に向ける顔、そのものに見えたのは、どうやら俺だけではないみたいだった。
こんな顔をされて、氷室さんの気持ちは気づかないほど、鈍感な俺ではなかなった。
だって、俺も同じ気持ちだから・・・・・・。
☆☆☆
次回更新6/29(火)9時!
残り11日・・・・・・。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます