第237話 番外編part5 初詣

 年が変わって数分が経った深夜。

 年を跨ぐまで起きていると言っていた美姫は俺の膝の上でぐっすりと眠っていた。


「あれだけ起きてるってはしゃいでたのにな」

「はしゃぎ疲れてんでしょうね。お昼もずっと翔斗君と遊んでましたからね」

「翔斗が産まれて初めての年越しだな」

「ですね」


 去年の夏。

 俺たちの2人目となる子供が生まれた。

 名前は翔斗しょうと

 名付けたのは姫香だ。

 ちなみに名前から分かる通り男の子。

 

「美姫はすっかりとお姉ちゃん面になってるよな」

「毎日翔斗君に話しかけてる姿が可愛いですよね」

「可愛いな」


 姫香の言う通り美姫は毎日のように翔斗に話しかけていた。

 その姿が可愛すぎて可愛すぎて、何時間でも見ていられる。 

 顔がますます姫香に似てきた美姫は小さな天使だった。

 

「とりあえず、2人をベッドに連れていきましょうか」

「そうだな」


 翔斗は翔斗で姫香の腕の中で安らかな寝顔で眠っていた。

 子供達2人をベッドに運んだ俺たちはソファーに座った。

 姫香が俺の肩に頭を乗せてくる。


「今年も無事に一緒に年越しできましたね」

「そうだな」

「今年で12年ですね」

「小学生が高校を卒業するまでの年月か。そりゃあ、俺たちも年を取るよな」


 俺たちは今年で30歳となる。

 美姫は4月から小学1年生だ。

 

「美姫ちゃんも4月から小学1年生ですもんね」

「子供が成長するのは早いな」

「ほんとですね。そのうちなんでも1人でできるようになっていくんでしょうね」

「そう思うと寂しいな」


 すでにかなりしっかりしている美姫がそうなる日はそう遠くはないだろう。

 そうなる前にできるだけ美姫のことを甘やかしてやりたい。

 もちろんそうなってからも甘やかすつもりだがな。


「寂しいですけど、きっとそれを見守るのが親の役目なんでしょうね。私たちもそうやって大きくなってきたわけなので」

「そうだな」

「さて、私たちもそろそろ寝ますか。明日っていうか今日は朝から忙しくなりますからね」

「毎年恒例の家族全員での初詣があるもんな。そうするか」

「そういえば、今年は真美さんたちは5日に来るそうですよ」

「今年は遅めだな」

「ですね。まぁ、私たちもその方がゆっくりと過ごすことができるのでありがたいですけどね」

「去年はてんやわんやだったもんな」

「私のお腹にまだ翔斗君がいましたもんね。それに美姫ちゃんも今よりやんちゃでしたもんね」


 姫香は去年のことを思い出したのかクスクスとおかしそうに笑っていた。

 去年は、元旦に俺と姫香の両親が家にやってきて、3日目に歩たちがやってきて大忙しだった。

 その点、今年は5日に歩たちがやってくるということで少しは楽になりそうだ。


「今年も騒がしい新年になりそうだな」

「もはや恒例行事ですけどね」

「そうだな」

「というか、これがないと新年が始まった感じがしませんからね」

「だよな」


 そこで話を終えた俺たちは2人が寝ている寝室に向かった。

 ベッドでは愛しい子供二人がすやすやと眠っている。 

 その二人を挟むように俺と姫香は川の字でベッドに寝転がった。


「ほんとに可愛いな」

「可愛いのは子供だけですか?」

「もちろん、姫香もに決まってるだろ。何歳になっても可愛いよ」

「ふふ、ありがとうございます。翔君も何歳になってもかっこいいですよ」

「ありがと」

「いくつになってもこうやって言い合いたいですね」

「姫香がそれを望むなら、何歳になっても言うけど?」

「望みます!」


 即答した姫香に俺は笑みを零す。

 姫香は何歳になってもその美しさと可愛さは変わらず、むしろ年を取るごとに増しているように思う。

 そんな姫香を日に日に好きになっていく俺。

 何歳になっても俺は姫香のことを愛し続けることになるんだろうな。

 子供越しに俺に微笑みかけている姫香のことを見てそんなことを思った。


☆☆☆



 


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る