第236話 番外編part4 美姫と大雪

 その日は大雪だった。

 朝から大雪警報が出て、大粒の雪がゆらゆらと降っていた。

 

「こりゃあ、かなり積もるな」

「ですね〜」

「え!?雪が積もるの〜!?」

「そっか。美姫は初めて雪を見るのね」


 俺の腕に抱かれている美姫が姫香そっくりの瞳をキラキラと輝かせて窓の外を見ていた。


「ねぇねぇ!雪だるま作れる〜?」

「たくさん積もったら作れるわよ〜」

「本当に!?美姫雪だるま作りたいっ!」

「じゃあ、たくさん積もったら雪だるま作ろうね」

「やったー!」

 

 美姫はバンザイをして喜びを表現すると俺の腕から降りて、窓に手をついて、今か今かと待ち遠しそうに雪を眺めていた。

 

☆☆☆


 翌日。

 一晩中降っていた雪は50センチほど積もり、一面銀世界だった。

 

「うわぁ〜!雪だ〜!綺麗〜!」


 これから、昨日約束した通り、俺と姫香と美姫で外に出て雪だるま作りを始めようしているところだった。


「ねぇねぇ、早速作ってもいい?」

「いいぞ」

「ちょっと待って美姫」


 走り出そうとしたところを呼び止められた美姫は少し頬を膨らませて俺「何、ママ〜?」たちの方を向いた。


「せっかくだから勝負しましょう!」

「勝負?」

「ママと美姫チームとパパ一人でどっちが大きな雪だるまを作れるのか勝負するの」

「本気か?」

「もちろん!どうかな美姫?」

「やるっ!!!」

「じゃあ、決りね。私たちが勝ったらパパから、パパが勝ったらママからプレゼントを後日あげます!」

「パパからのプレゼント!」と目を見開く美姫。


「絶対に勝つ!」

「パパもいいよね?」

「もちろんいいぞ。そのかわり手は抜かないからな?」

「もちろんよ!勝負は本気でしないと楽しくないでしょ?」

「そうだな」

「じゃあ、位置についてよーいスタート!」


 姫香の合図で雪だるま選手権が始まった。

 ちなみに、制限時間は30分。

 大きな雪だるまを作るだけ。

 そして、大きな雪だるまを作るといっても限度がある。

 つまりは、これはどう相手に邪魔をするかで勝負が決まる。

 前半の15分で俺はできるだけ大きな雪だるまを作ることにした。

 ということで、早速雪だるま作りにかかろうとした、その時「えいっ!」と美姫が俺に向かって雪玉を投げてきた。

 どうやら、考えることは同じらしい。

 姫香のことを見ると、ニヤッと笑みが返ってきた。


「パパには絶対に負けないから!」


 美姫が何度も小さな雪玉をぶつけてくる。

 もちろん、小さい雪玉な上、美姫の力でなので、当たってもさほど痛くなかった。

 なので、俺は美姫の妨害を無視して雪だるまを作っていった。

 自分の妨害が効かないと思ったのか美姫は「ママ、パパ強い!」と姫香の元へと向かって行った。

 そんな美姫に姫香は何かを言っている様子だったが、気にせずに雪だるまを作り続ける。

 ちょうど下の部分を作り終えたところで、美姫がまたやってきた。


「ねぇパパ〜!抱っこして〜!」

「えっ、抱っこ・・・・・・」

「うん!抱っこ!」


 これも姫香の作戦だろう。

 俺が美姫に抱っこをせがまれて断れないのを姫香は知っている。

 雪だるまを作る手を止めて無邪気な顔で俺のことを見上げている美姫のことを抱っこする。


「わーい!パパの抱っこ好き!」

「じゃあ、もう下ろしてもいい?」

「まだダメ!もう少し!」


 そうやって美姫を抱っこすること5分。

 その間に姫香はどんどんと大きな雪だるまを作っていく。

 俺のより大きな土台を作り終えていた姫香は上に乗せる雪だるまを作り始めていた。


「なぁ、美姫。いつまで抱っこしてればいいかな?」

「んー。後5分!」

「パパ負けるんだけど?」

「うん!パパ負けて?」


 そんなつぶらな瞳でおねだりされると負けてもいいかなと思ってしまう。

 てか、もう今から作っても勝てそうにないし、負けるかな。姫香には申し訳ないけど。

 そう思って俺は美姫を下ろすと「よし、美姫。雪合戦するか」と言った。


「雪合戦!?したい!」

「じゃあ、今度はパパとチーム組もうか」

「それってママが敵ってこと?」

「そうだね」


 一瞬だけ考えるそぶりを見せた美姫だが、すぐにニヤッと笑って「やる!」と頷いた。

 雪だるま作りは姫香たちに勝利を譲ることにした。

 そして、これから第二ラウンドが始まろうとしていた。


☆☆☆


 皆さんのところは雪大丈夫でしたか?

 私が住んでいるところはかなり雪が降って大変でした。

 久しぶりの雪掻きで至る所が筋肉痛です笑

 お体に気をつけて、良いお年をお迎えください!

 年内にもう一話出す予定です!

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