第234話 番外編part2 姫香と初めてのお酒②

 そして二時間後・・・・・・。

 

「翔きゅん~」

「きゅ、きゅん……?」


 猫撫で声で俺のことを呼んだ姫香は酔っているのが分かるほど、その真っ白な肌を紅潮させていた。


「姫香。もうお酒飲むのはやめとこうか」

「え~、なんでですか~」


 そう言って、俺の腕にくっついてくる姫香。

 

「酔ってるからに決まってるだろ」

「酔ってませんよ~」とお酒の缶に手を伸ばそうとした姫香の手を掴む。


「もうダメだ」

「むぅ~」

「そうやって頬を膨らませてもダメなものはダメ」

「翔きゅんが意地悪です!」

「こら~翔!姫香ちゃんをいじめるな~!」


 そしてこっちにも酔っぱらいが一人。

 顔色こそあまり変わっていないが、その様子から酔っていることが分かる真美。


「はぁ~。いいから二人とも、もうお酒は飲むな」

「いや~飲む~!」

「私も飲みます!」

「絶対に飲ませなないからな」


 俺は姫香を腕から引きはがして、二人が手に持っていたお酒を奪い取ってキッチンに運んだ。

 ついでにサイドテーブルに置いてある、まだ空いていないお酒もすべて。


「お酒持っていくなー!」

「今日はもう本当にやめとけ。飲み過ぎだ」

「ケチ―!」

「ケチで結構、こっちは二人の体を心配して言ってやってるんだぞ。あれを見ろよ」

 

 俺は地べたで熟睡中の歩を指差した。 

 歩はどうやらお酒を飲んだら眠たくなるタイプらしく、一本目の缶を開けた時点で横になって眠っていた。


「二人も歩みたいに寝たらどうだ?」

「やだ~眠たくないもん~!」


 どうやら真美はお酒を飲むと子供みたいになるらしい。

 子供のように駄々をこねていた。


「私も眠たくありません。私は翔きゅんとくっついてたいです」


 そして、姫香は酔うと甘えん坊になるらしい。

 またしても俺の腕にくっついてきて離れようとしなかった。


「はいはい。もう分かったからくっついててもいいから」

「やったー!えへへ」


 姫香にくっつかれて動けないことをいいことに真美がキッチンに向かおうとしていた。


「真美?どこに行くんだ?」

「ちょ、ちょっとトイレに」

「嘘だろ」

「ほんとだってば!?」

「キッチンに行くつもりじゃないだろうな?」

「ぎくっ!?」

「なんだその反応は?」


 真美が肩をビクッとさせた。

 そんな真美に俺はもう一度釘をさす。


「お酒はダメだからな?」

「わ、分かってるよ……」


 明らかにしょんぼりとした真美は歩の隣に寝転がった。


「私は寝るから。後は二人で仲良くね」


 そう言った真美は数分もしないうちに本当に寝てしまった。

 

「寝てしまいましたね」

「そうだな」

「私たちはどうしましょうか?」

「姫香も寝るか?」

「膝枕してください!」

「ひ、膝枕……」

「それっ!」


 俺が頷く前に姫香は膝の上にの転がった。

 そして、無邪気な笑顔を向けてくる。


「えへへ、翔くんの膝枕!」

「呼び方が戻ってる」

「最高です!」

「それは、よかったな」

「頭も撫でてください!」


 完全に甘えモードになっている姫香は容赦なく俺に甘えてくる。

 別に悪い気はしないのだが、あまりにもその顔が無邪気すぎて心臓に悪い。

 まぁ、甘えさせるんだけどな。

 俺は姫香の頭を優しく撫でた。

 姫香はその頬をこれでもかと緩めて嬉しそうにしていた。


「幸せです!私が寝るまでずっとしててください!」

「はいはい。分かったよ。ほら、おやすみ」

 

 まるで大きな子供ができたみたいだな。

 こんなに可愛い子供だったら、たくさん甘やかしてしまうんだろうな。

 いつの日か、できるかもしれない姫香との間の子供を思わず想像してしまった。

 うとうととしていた姫香はずっと幸せそうな顔をしていた。

 そして、眠りについた後も、良い夢でも見ているのだろう、その顔が変わることはなかった。

 

「ところで今日って、まみの誕生日だったよな」


 すっかりとお酒解禁日となってしまった真美の誕生日。

 その後目を覚ました三人は三者三様の反応をしていた。

 最後に真美にプレゼント渡した俺たちはバカップル宅を後にしたのだった。


☆☆☆

 

 





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