『①4人で花火』
8月7日(土) 20:00〜
辺りには蝉の鳴き声が響いていた。
すっかりと日は落ち、花火をするにはちょうどいい暗さだった。
夏の夜風は気持ちがいい。
昼間の暑さはどこ吹く風だ。
「花火するぞ~!」
「おー!」
前を歩く『バカップル』が元気よく言う。
俺たちはホームセンターで事前に花火を買って、土手に向かって歩いている途中だった。
「これだけあれば一時間は遊べそうだね~!」
「だな。花火なんて久しぶりだわー」
「私も~。この時期しないからね~。姫香ちゃんたちは?」
真美が後ろを振り向いて聞く。
「私は何年ぶりでしょうか。夜空に咲く花火は毎年見てますけど、こうやって誰かと一緒にやる花火は……もう、前回がいつだったか覚えてませんね。あ、でも……」
「でも?」
姫香が俺の方を見て何か言いたそうな顔をしていた。
今日の姫香の服装はシンプルな花柄のワンピースだった。
「どうした?」
「翔君と一回だけ一緒にやったことありましたよね?」
そう言われて、俺は記憶を辿った。
確かに一度だけ、姫香と花火をしたことがあったな。
「そうだな。やったな」
「ですよね。あの時、私、線香花火で翔君に負けて悔しかったのを覚えてます」
「よくそんなこと覚えてるな」
「だって、悔しかったんですもん!」
「そんなに悔しかったんだ。じゃあ、今日も勝負するか?線香花火あるだろうし」
「もちろん、やります!」
姫香は負けませんと拳を握った。
「なになに~なんの話してるの~?」
「線香花火でどっちが長く保っていられるかの勝負をしようって話をしてました」
「私も参加したい~」
「いいですよ。一緒にやりましょう!」
「じゃあ、俺も!」
ということで『バカップル』の参加が決定した。
「なんだか、ワクワクしますね」
「そうだな」
「青春してるって感じがします!」
姫香はキラキラと輝いた笑顔を俺に向けた。
その笑顔は夜空に輝くどの星よりも綺麗だった。
「お二人さん。もうすぐ土手に到着するよ~」
「了解」
そう言った真美の言葉通り、五分後には土手に到着した。
☆☆☆
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