第168話 体育祭編part22 体育祭を終えて
「まったく、私にこけるなと言ったのはどこの誰ですか?」
「ごめん・・・・・・痛っ」
「我慢してください。私を心配させた罰です」
姫香の肩を借りながら保健室にやってきたのはいいが、保健先生は留守で姫香が手当てをしてくれることになった。
「まぁ、でも、カッコよかったから許しますけどね」
そう言った姫香の幸せそうな顔を見て、俺は思わず笑みを溢してしまう。
「なんで、笑ってるんですか?」
「いや、可愛い彼女にこんなにも想ってもらってるなんて、幸せ者だなと思ってな」
「もぅ!いきなりそんなこと言わないでください」
照れを隠すように姫香は消毒液のついたガーゼを擦りむいた膝にトントンとした。
消毒液が擦り傷に染みて痛かったが、そんな痛みすら愛おしく思えてしまうのだから、俺も相当姫香のことを好きなんだなと思った。
「はい、これでお終いです」
そう言って、膝にできた擦り傷に対し少し大きめの絆創膏を貼ると姫香は立ち上がった。
その時、校庭の方から『ただいまをもちまして体育祭を閉幕したいと思います』というアナウンスが聞こえてきた。
「終わってしまいましたね。体育祭」
「悪いな。姫香だけでも先に校庭に戻ってもらうべきだったな」
「何言ってるんですか。むしろ、翔君と二人っきりで体育祭の最後を迎えれたんですから、私はそれだけで満足です。それに、楽しかったですから」
「そうだな。楽しかったな」
「誰かのために頑張るってのはやっぱりいいものですね!それが、愛する人だったら尚更です!」
「姫香はずっと俺のために頑張ってくれてるような気がするんだが?モデルになったのだって、俺のためだろ?」
「そういえばそうですね」
「なら、今度は俺が姫香のために頑張る番かな」
「それは、期待してもいいのですか?」
俺に期待の眼差しを向ける姫香に「どうだろうな」とはぐらかすと俺は立ち上がった。
そして、姫香の頭を撫でると保健室の入り口へと歩き出す。
「もぅ、素直じゃないんですから!」
そう言って俺の隣に並んだ姫香は俺の手を握った。
☆☆☆
教室に戻るとちょうど歩達も戻って来たところらしく鉢合わせになった。
「翔、大丈夫なのか?」
「ああ、もう痛みはないな」
「豪快にこけるから心配したじゃねぇか」
「心配かけて悪かったな。俺も必死だったてことで許してくれ」
「そうだな。あんな必死な翔を見るのは久しぶりだったから許してやるか。な、真実?」
「そうね。姫香ちゃんのために頑張ったんだろうから、今回は大目に見てあげるわ」
そんな『バカップル』は手に俺と姫香の椅子を持っていた。
「椅子持ってきてくれたのか。ありがとな」
「すみません。真美さん」
「いいのよこのくらい。なんてったて、二人は今日のヒーローなんだか!」
「「ヒーロー?」」
真美のその言葉に俺は姫香と顔を見合わせた。
「そうそう!特に翔!あんたのおかげで私たちのクラスは優勝できたわ!」
「え、そうなんですか!?」
それを聞いて最初に驚いたのは姫香だった。
「翔君!優勝ですって!やりましたね!」
「そ、そうだな」
正直、クラス順位なんてどうでもいいと思っていた。だけど、こんなに喜ぶ姫香の顔と嬉しそうに笑ってる親友二人の顔を見ると俺まで嬉しくなってくる。
「なんですか、その反応。嬉しくないんですか?」
「いや、嬉しいよ。ただ、驚いてるだけ」
「これもすべて翔のおかげだ!ありがとな!」
「別に俺は大したことしてないさ」
「それがしてるのよ。あんたは百メートル走でも学年別対抗リレーでも一位を取ったんだがら。あの二種は他の種目より得点が倍なのよ」
「それなら、姫香だって百メートル走で一位を取っただろ。それに、学年別対抗リレーは俺一人で勝ったわけじゃない」
「へぇ〜。あの翔がそんなこと言う日が来るなんてね〜」
「たしかに!あの翔がなー」
「な、なんだよ。悪いかよ」
「いや〜。翔も変わったんだなって思ってね〜。私は嬉しいよ!」
「そうだなー。俺も嬉しいぞ!」
そんな風に俺をからかってくる『バカップル』を無視して教室の中に入ると、クラスメイトから、さらなる称賛を浴びることになった。
こうして、今までで1番の注目を浴びた体育祭は幕を閉じた。
☆☆☆
これにて体育祭編終了です!
10月は文化祭編に入ります!
これまで以上に好きオーラをだす姫香をお楽しみください😏
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