6月12日(土) 17:30〜

 氷室さんの部屋の前に到着した。

 俺は部屋に入る前に氷室さんに話しかけた。


「さて、氷室さん。起きてるんだろ?」

「やっぱり、バレてましたか」

「やっぱり、あれは勘違いじゃなかったんだな」

「なんだか、起きてしまうのが勿体無くて」

「いつから起きてたんだ?」

「本当にさっきですよ。家の前に到着した時です」

「そうか」


 よかった・・・・・・。

 あの話は聞かれてないみたいだな。


「起きてるなら、おろすぞ」

「え〜。もう少しだけダメですか?」


 深紅の瞳が上目遣いで俺の顔を見ていた。

 破壊力半端ねぇ〜。

 演技をしている時のかっこいい氷室さんとは違って、今の天使の可愛さを持った氷室さんだ。


「い、いいけど、このままだと鍵開けれないんだが?」

「私が寝ていたらどうするつもりだったのですか?」

「それは、なんとかして起こして・・・・・・」

「その手に、合鍵、持ってますよね?」

「そこは聞いてたのか・・・・・・」

「はい。なんなら、お泊まりしていきますか?」


 氷室さんはニヤッと笑ってそんな冗談を言う。

 本当に心臓に悪い・・・・・・。


「しないからな!」

「残念です。じゃあ、その代わり、明日デートしませんか?」

「いやいや、全然代わりになってないからな」

「じゃあ、お泊まりしますか?」


 何その究極の二択・・・・・・。

 お泊まりするか。

 デートするか。

 氷室さんは俺の反応を見て楽しんでいるようだった。

  

「なぁ、からかってるだろ。やっぱり、おろしていいか?」

「嫌です」


 そう言って、氷室さんは俺の首に抱きついてきた。

 さっきから、わずかに当たっていた柔らかな感触が、体に密着してきて、もろに感触が伝わってきた。

 なんか、氷室さんがワガママになっている気がする。


「と、とりあえず、家の中に入ろう」


 俺の心臓がもたん・・・・・・。

 唯香さんから借りた合鍵を使って鍵を開けると、家の中に入って、玄関先で氷室さんをおろした。

 氷室さんは靴を脱ぎながら何かを呟いていた。

 

「王野さんが悪いんです。気づかないから・・・・・・」

「何か言ったか?」

「なんでもありません!」


 そう言うと、氷室さんはそっぽを向いて、廊下を歩いてリビングに向かった。

 俺がついてきてないのに気がついたのか、氷室さんは途中で立ち止まって振り返った。


「何してるんですか?上がってください」

「え、普通に帰るつもりだけど?」

「私が帰すと思いますか?」

「いや、まぁ、氷室さんの許可を得なくても・・・・・・」

 

 ズカズカと氷室さんは引き返してきて、俺の腕いしがみついた。

 

「もう、私決めました!」

「な、何を?」

「明日はデートしましょう!」

「俺に拒否権は?」

「もちろん、ありませんよ!」


 氷室さんは今日一の笑顔を見せて、俺から離れた。

 氷室さんに明日デートすることを取り付けられて、俺は氷室さんの家を後にした。


☆☆☆

次回更新は6/21(月)


0時、9時、14時更新予定!

本数は変わるかもしれませんご了承ください。


新作投稿中〜

『行きつけのカフェに看板娘の天使様に彼氏のフリをしてほしいと頼まれたました。』

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