6月13日(日) 11:00〜 『氷室さんとデートpart2』

 突然の映画撮影に巻き込まれた翌日。

 6月、2回目のデートをすることになっていた俺は先週と同じ場所で氷室さんを待っていた。


「週1でデートとか恋人かよ・・・・・・」

 

 氷室さんと本格的に話すようになって、まだ2週間弱、なんだか随分と打ち解けたものだな。

 特に昨日の氷室さんなんてヤバかったな。

 

「あんな一面もあるんだな」

「どんな一面ですか?」

「うわぁ!? 氷室さん・・・・・・おはよう」

「おはようございます。王野さん。で、誰に何の一面が?」

 

 そう言って、首を傾げた氷室さんの今日の服装は、昨日の清楚感とは違って、攻めの服装だった。

 真っ白な肩が両方見えている水色のオフショルダーに真っ黒なプリーツスカート。足元には赤色のヒールを履いている。そのせいか、今日の氷室さんは俺と同じ目線で深紅の瞳が俺を見つめていた。


「なんでもない。それより、今日はヒール履いてるんだな」

「よくお気づきで!どうですか?今日の服装は?」


 そう言って、氷室さんは一回転した。

 ふわっと真っ白な髪の毛が宙にまった。

 さすがモデルだなって感じだ。何を着ても氷室さんは本当によく似合う。


「よく似合ってるな」

「ありがとうございます!」


 氷室さんは嬉しそうにはにかんだ。


「それで、わがまま姫。今日はどちらへ?」

「むぅ〜。私はわがまま姫じゃありません!でも、王野さんがそういうなら、今日1日はわがまま姫でいきましょうか?」

「それは、困る・・・・・・」

「1度口から出た言葉は巻き戻せないのですよ。時間と同じで。分かりましたか、王野さん?」

「え・・・・・・?」

「え?じゃありませんよ。まったく、私じゃなかったら、さっきので嫌われてますよ?」

「ごめん。気をつける」

「まぁ、許してあげましょう。そのかわり、今日1日は私のわがままに付き合ってもらいますからね!覚悟しといてくださいね?」

「わ、分かった」

「それじゃあ、1つ目のわがままです。私と手を繋いでください!」


 そう言って氷室さんは手を差し出してきた。俺はその小さくてスベスベの手を握った。しかし、俺の気持ちはそこにはなく、昔のことを思い出していた。


ーーー王野君。ダメだよ。そんなこと言っちゃ。お母さんが可哀想だよ。それにね、1度口から出た言葉は巻き戻せないんだよ。だから、そんなこと言っちゃダメ。


 いつだったか「ひろくん」にそう言われたことを思い出した。その時は、お母さんに叱られて、なんだか腹が立って、その愚痴を「ひろくん」に聞いてもらっていた。


「また、懐かしいことを思い出したな・・・・・・」

「どうかしましたか?」

「いや、なんでもない。それで、どこに行くんだ?」

「そうですね。まずは、腹ごしらえに行きましょう!私、行ってみたいパスタ屋さんがあるんです!」


 氷室さんがそう言ったので、昼食はパスタに決まった。

 最近、「ひろくん」との思い出をふとしたきっかけで思い出す。

 なぜだろう・・・・・・。

 会いたいと思っているからだろうか?

 なぜか?は分からないが、そのきっかけがいつも氷室さんの言葉であることは間違いなかった。

 俺はそんなことを思いながら氷室さんの隣を歩きパスタ屋さんに向かう。

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