6月19日(土) 12:00〜

 俺たちは11時30分ごろまで集中して勉強をした。

 基本的には各々が問題を解く感じだった。それで、氷室さんが分からなくて困っているときに俺が少し手助けをする。それの繰り返しで1時間弱、勉強をしていた。といっても、俺の手助けは必要ないんじゃないかというくらい、氷室さんはスラスラと問題を解いていた。 

 俺が手助けをしたのは3回だけだった。

 てか、普通に氷室さんはは頭がいい。仕事をこなしてのこれだから、本当に凄いと思う。


「もう、お昼ですか」

「みたいだな」

「なんだか、時間が進むのがあったという間です」

「そうだな」

「お昼ご飯作っちゃいますね」

「え?作ってくれるのか?」

「もちろんです」

「ありがとう」

「どういたしまして。王野君はくつろいでいてください」

「何か手伝うことは?」

「王野君は料理できるのですか?」

「できないけど……」

「ならそこで座っていてください。後で、お皿出しくらいはしてもらいますから」

「了解」


 氷室さんはキッチンに立つと白いエプロンを付けて、料理を作り始めた。

 ヤバい……。

 めっちゃ嬉しい……。

 一昨日も作ってくれたけど、それとはまた違った嬉しさが俺の中に芽生えていた。

 何を作ってくれるのかとソワソワしていると、氷室さんに笑われた。


「そんなに気になりますか?」

「気になるな」

「うふふ、楽しみにしておいてください」

「分かった。そうする」


 氷室さんにそう言われたので、気にはなるが俺はカバンから文庫本を取り出して、読書をして料理が完成するのを待つことにした。

 30分もすればキッチンの方からいい匂いが漂ってきた。

 この匂いは……。


「王野君、もうすぐできるので食器棚からお皿出してもらえますか?」

「了解」


 氷室さんに呼ばれキッチンに向かう。

 

「やっぱり、鮭のマヨネーズ焼きか」

「分かりましたか?」

「匂いでな」

「さすがですね」

「もしかして、覚えてたのか?」

「もちろんです!」

「そっか」

「王野君が私の好物を覚えていてくれたように、私も王野君の好物を覚えていました。なんだか、考えることは同じようですね」

「そうだな」

 

 もう、何年も昔のことなのに、お互いがお互いの好物を今でも覚えているのって、なんかいいな。 

 というか、氷室さんが俺の好物を覚えていてくれたことが単純に嬉しい。そして、それを作ってくれたことがさらに嬉しい。

 俺も「ひろくん」の前で鮭のマヨネーズ焼きを食べたのは1回しかないんだけどな。

 それを覚えていてくれたんだな……。


「今でも、鮭のマヨネーズ焼きはお好きですよね?」

「好きだな。1人暮らしを始めてからは実家に帰った時にしか食べてないけど」

「そうなんですね」

「自分では作らないからな」

「お母様の味に勝てるか分からないけど、堪能してください」

「別に比べたりはしないよ。というか、早く食べたいんだが?」

 

 もうすでに我慢ができない。

 俺は早く食べたくてワクワクしていた。


「なら、早くお皿出してもらえますか?」

「了解」

  

 俺は白色の食器棚からお花柄の皿を2枚取り出した。

 その上に氷室さんが鮭のマヨネーズ焼きを置いた。

 めっちゃいい匂い。その匂いだけでご飯何杯か食べれそう。


「王野君、頬がゆるゆるですよ?」

「そりゃあ、なるだろ」

「そんなに喜んでくれるなら、作った甲斐があるというものです。ですが、その顔は食べたときに見せてくださいな」


 氷室さんがご飯を茶碗によそって、俺たちはソファーの前に移動した。

 それぞれの前にご飯と鮭のマヨネーズ焼きと箸をセットして、いただきますをすると、昼食を開始した。


☆☆☆

次回更新18時!


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る