第226話 大学編part26 四人で温泉旅館③
温泉から上がり、豪華な海鮮料理を食べた俺たちは浴衣姿で遊技場を訪れていた。
「さて、ここに来た理由は分かってるわよね。翔?」
「そりゃあな。こんなもの手に持たされたら誰だって分かるだろ」
俺達の手には卓球のラケット。
そして目の前には卓球台。
これだけ準備がそろっていれば、これから始まることは誰だって想像することができるだろう。
「なら準備は良いわね?」
「私はいつでも大丈夫です!」
どうやら姫香もノリノリのようだ。
「翔は?」
「いつでもいいぞ」
「その余裕がいつまでもつかしらね」
「真美こそ随分と余裕そうだな」
「そりゃあ、そっちには初心者の姫香ちゃんがいるからね!」
「だそうだぞ。姫香」
「絶対に負けませんからね!」
ルールは11点先取。
交互に打ち返すこと。
負けた方がジュースを奢りと言うことで勝負が始まった。
「それ!」
真美の緩いサーブを姫香がチャンスボール並みの緩いボールを歩に返す。
「おりゃあ!」
そのボールを歩がスマッシュする。
歩のスマッシュを俺が軽々返す。
それを真美が空振りする。
自信がありそうだった真美も姫香と同じくらいの腕前だった。
いや、それ以下だった。
これで五回目の空振りでスコアは5-2だった。
「なんで打てないのよ!」
「真美さん。ラケットに当てるだけですよ?」
「姫香ちゃんに言われると悔し~!!」
しまいには姫香に煽られる真美。
真美も運動神経は悪い方ではないはずだが、どうやら道具を扱う系のスポーツは苦手なようで空振りを繰り返している。
それに比べ姫香は初めからラケットに球を当てることができていた。
「絶対に当てるんだから!」
「頑張ってください!」
「じゃあ、いくぞ」
緩いサーブを真美に向かって打つ。
完全に接待ボールだ。
ここまで空振りを続けると可哀そうに思えてきたのだ。
「ほらそこです。真美さん!」
「えいっ!」
「当たりましたよ!」
真美がようやくラケットにボールを当てた。
そのことに喜んだ姫香はボールを打ち返すのを忘れて歩達の方に得点が入った。
その後は勝負というよりは、姫香と真美の卓球練習とう感じの試合になった。
勝ったのは俺たちだったがな。
「最後の方はしっかりとラケットに当てれてましたね!」
「だよね!私凄くない!」
「さすがです!」
「姫香ちゃんもさすがね!運動神経良すぎ!」
互いに褒め合う二人はその手にフルーツ牛乳を持っていた。
「なぁ、翔。後で一対一で勝負しようぜ」
「いいぞ」
「まぁ、勝てないと思うが何かあるかもしれないからな!」
「何を期待してるのか分からないが、勝てないと思うぞ?」
「それはどうかな」
何かを企んでいる様子の歩。
一体何を企んでいるのか。
想像もできなかったが、きっと勝つのは俺だろうと思っていた。
しかし・・・・・・。
結果は俺の負け。
俺に勝負で久しぶりに勝った歩は大号泣。
さらには真美まで泣いていた。
「やっと、やっと翔勝った・・・・・・」
「これは私たちの勝利ね!」
抱き合いながら勝利を噛み締めてる二人。
さっきの試合は無効試合だと言いたいところだったが、二人のこんな姿を見ると何も言う気になれなかった。
「つか、姫香まで向こうにつくとは思ってなかったんだが?」
「ふふっ。私は翔君をドキドキさせるのが目的でしたので」
「なら、見事にやられたわけだな。俺は」
歩の作戦とは色仕掛けだった。
真美がそれをするのは、まぁまだ分かる。
だが、まさか姫香までやるとは予想外だった。
浴衣の下に隠された真っ白な肌に俺は負けたと言ってもいい。
つまりはこの勝負は無効試合なのだ。
俺は歩に負けたわけではないのだから。
☆☆☆
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