6月6日(日) 18:00〜『氷室さんの異変』
氷室さんとデート(仮)をした翌日、俺は夕方過ぎまでだらだらと過ごしていた。
家にいても特にすることはないので、勉強か読書をしているか、ベッドに寝転がってゴロゴロするくらいだ。
幸いにも昨日あれだけ雨に打たれたにも関わらず、体調の方はなんともなかった。
氷室さんは大丈夫だろうか。
「連絡してみるか」
俺はスマホを手に取り、氷室さんにメッセージを送ってみた。
(昨日は災難だったな。風邪ひいてないか?)
とりあえず、氷室さんからの連絡を待つとしよう。風邪ひいてないといいんだがな。
氷室さんから連絡が来たのは、それから数時間後だった。
外はすっかりと暗くなり、俺は夕飯を食べ終えてお風呂から上がったところだった。
「お、氷室さんから連絡が返ってきてる」
(あの、電話かけてもいいですか?)
「電話・・・・・・」
なんで電話?
別にいいけど、特に話すことないんだけどな。
(いいよ)
とりあえず、俺はそう返信した。
すると、すぐに既読がついて電話がかかってきた。2コール目で俺は電話に出た。
『もし、もし』
「もしもし、どうした?」
『いえ、特に用はないのですけど・・・・・・』
あれ、なんかいつもと声が違うような。
電話のせいかな?
「声変だけど大丈夫か?」
『え、だ、大丈夫ですよ』
「そうか?ならいいんだけどな」
『はい。大丈夫です。ご心配ありがとうございます』
電話の向こうで氷室さんがお辞儀をしているのが目に浮かんだ。
それからしばらく沈黙が続いた。
その間の氷室さんが何を話そうか考えている気配が面白くて少し笑ってしまった。
『な、なんで笑ってるんですか?』
「いや、なんでもないよ」
『なんなんですか?気になります?』
「本当に大したことじゃないってば」
『それでも気になるんです』
「氷室さんが何話そうか考えてるのが面白いなって思っただけだよ」
『そ、それはしょうがないじゃないですか!緊張してるんです!』
「緊張してるのか?」
『・・・・・・はい』
緊張ね・・・・・・。
俺と話すことに緊張するのかね。昨日も会って話してるのに。
『王野さんは、緊張しないのですか?』
「しないな」
『そう、なんですね。電話はよくされるんですか?』
「あんまりしないかな。する相手もいないしな」
俺がそう言ったら氷室さんはまた黙り込んでしまった。
「もしもし」
『・・・・・・』
「おーい。返事ないから切ってもいいか?」
『だ、ダメです!もう少し、もう少しだけお話しましょう!』
氷室さんがあまりに必死にそんなことを言ってくるので、電話を切りづらくなってしまった。
それから氷室さんと他愛もない話を30分くらいして、電話を終えた。
最後の方は緊張が解れたのか、氷室さんは楽しそうに笑ったりしていた。
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