第153話 体育祭編part7
翌日、作戦決行日の昼休憩。
俺は一人、三年生の教室にやってきていた。
目的は才津という生徒に放課後体育館裏に来るように言うこと。
三年生の教室に来たはいいが、俺は才津が何組にいるのか知らなった。すぐに
なので、とりあえずすれ違った生徒に聞くことにした。
「すみません。生徒会長って何組か分かりますか?」
「玲人君のこと?」
「あ、はい。その人です」
「玲人君なら三組だよ~」
やけに親しげに才津の名前を呼ぶなと思いながら、その生徒にお礼を言って俺は三組の教室に向かった。
教室の前に立つとすぐにどの生徒が才津玲人なのか分かった。
「玲人君。あ~ん」
「私のも食べて~」
才津は教室のど真ん中、まるで自分がこのクラスの王様だとでも言わんばかりの態度で席に座っていた。
その両側には女子生徒がいて才津に弁当を食べさせていた。
肩まで伸びた金髪、顔は歩といい勝負のイケメン、首からは金色のネックレスをぶら下げていた。
こいつが真美を困らせている元凶。
俺の感情は一気に冷たくなった。ここで、こいつを殴ってやりたい。そんな衝動に駆られたが、グッとこらえた。作戦決行は放課後だ。ここでこいつを殴ってしまえば目立ってしまう。
冷静さを保ちながら俺は教室に入り才津に近づいた。
「あんたが才津か?」
「あ、誰だお前」
「お前なんかに名乗る義理はない。要点だけ言う。真美のことで話がある。放課後、体育館裏に来い」
「ほぉ~。俺にお前なんて言うやつ初めて見たな。そうか。お前が真美の彼氏か。ちょうどいい。放課後と言わず、今ここで話そうや」
才津は余裕たっぷりの笑みを浮かべて立ち上がった。
身長は俺より十センチ高い百八十センチってところか。才津はその余裕の笑みで俺のことを見下ろしていた。
教室中が異様な空気に包まれていた。
さっきまでそばにいた女子生徒もいつも間にかいなくなっている。
「率直に言う。お前、真美と別れろ。お前なんかでは真美とは釣り合わん。安心しろ、お前と別れた後、真美のことは俺が可愛がってやるから」
そう言って、才津はいやらしく舌なめずりをした。
どうやら、才津は歩の顔を知らないらしい。俺のことを真美の彼氏と勘違いしていた。
「そうだな。俺と真美では釣り合わないだろうな」
「なら決まりだな。真美に別れると今すぐ言ってこい。そして俺のもとに来るように伝えとけ」
「それは無理だな」
「あぁん?お前、二年生だよな?調子に乗り過ぎじゃねぇか?」
才津はガンを飛ばしてくる。
今までそうやっていろんな生徒を脅してきてたんだろな。
全く怖くないけど。
「調子に乗ってるのはお前だろ?一体何様のつもりだ?自分が王様にでもなったつもりか?たかが生徒会長くらいで威張るなよ」
「てめぇ!俺が誰だか分かってんのか!?」
教室中に才津の怒鳴り声が響き渡る。
その声を聞いたこのクラスにいる生徒たちは完全に震えあがっていた。
廊下にもその声を聞いてか、他のクラスから人が集まりつつあった。
そろそろ引き上げだな。
「知らんし、興味ない。とにかく、放課後、体育館裏に来い。いいな?」
俺はそう言い残すと教室を出て行った。
「ふざけんな!」
教室を出た瞬間、ドーンっと音が聞こえてきた。
振り返ってみるとどうやら才津が自分の机を蹴とばしたらしい。しかし、俺はそれを無視して自分の教室に戻って行った。
☆☆☆
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