第152話 体育祭編part6

 二人が帰った後、俺は姫香の淹れてくれたコーヒーを飲みながらさっきのことを考えていた。


「なんだか浮かない顔をしてますね」

「さっきの話聞こえてたか?」

「最後の方だけ聞こえてました」

「やっぱりか」


 てことは歩にも聞こえてるな。


「すみません。聞き耳を立てるつもりはなかったのですが……」

「謝らなくてもいいよ。どうせ、相談しようと思ってたし」

「そうなんですか?」

「うん。姫香にも協力してほしいことがあるからね」

「何があったのかは聞こえなかったですけど、真美さんが困っているということだけは分かりました。なので、私にできることならなんでも協力します!」


 類は友を呼ぶとよく言うが、どうやら姫香も『バカップル』に負けず劣らずの友達想いらしい。

 

「真美さんは私にとっても大事な人ですから」

「なぁ、結構前から聞こえてないか?」

「さぁ、どうでしょね~?」


 そう言ってニヤニヤと笑っている姫香。

 

「山崎さんはかなり集中されていたので聞こえてないと思いますので」

「だといいんだがな……」


 歩のことだからもしかしたら気が付いてるかもしれないがな。歩はあれで意外と感が鋭いところがあるからな。


「それで私は何をすればいのでしょうか?」

「姫香を危ない目に遭わせたくはないし、遭わせたら真美に殺されそうだから、危ないことはさせられないんだけど、姫香には少し離れたところから俺と才津が話しているところを動画で撮ってほしいんだ」


 真美のことで話があると言って人気のないところに呼び出して、挑発してわざと殴られる。それを証拠として脅しかえす。これ以上真美に手を出せないように。それが、俺の考えた作戦だった。もちろん、真美には嘘の作戦と日時を伝えた。こんなこと真美が知ったら絶対に止めるのは目に見えているからだ。


「もちろん、危ないと思ったらすぐに逃げてほしい」

「分かりました。頑張ります」

「作戦決行は明日の放課後だ」

「明日なら私も大丈夫です」

「こんなことに巻き込んでごめんな」

「何を言ってるんですか。大事な人が困っていたら助ける。そう言ったのは翔君でしょ?それは私も同じ気持ちですから。必ず助けましょう」

「そうだな」


 もちろん。姫香にも作戦のことは言わない。俺が殴られたら姫香はもしかしたら泣くかもしれない。それはそれで心が痛むが、俺が殴られて真美を助けれるのなら安いもんだ。

 そう思いながら俺は姫香の淹れてくれたコーヒーを飲み干した。

 

☆☆☆


 

 


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