第219話 新生活編part19 姫香の誕生日②
給料をもらい古本屋を後にした俺はある場所に向かっていた。
その場所で来週に控えている姫香への誕生日プレゼントを買うつもりだ。
何を買うかは姫香にネックレスを貰った時から決まっていた。
目的の物を無事に買うことができた俺は家に帰ることにした。
帰ったときに姫香にバレないように買ったものはちゃんとカバンの中にしまった。
「ただいま」
「おかえりなさい」
リビングからひょこっと顔を出して俺のことを出迎えてくれた姫香。
どうやら読書をしていたようでその手には本を持っていた。
手洗いうがいをして、一旦自分の部屋に向かった。
姫香にバレないところにプレゼントを隠してリビングに向かう。
「バイトお疲れさまでした。コーヒーでも飲みますか?」
「そうだな。もらおうかな」
「すぐに淹れますね」
そう言ってソファーから立ち上がった姫香は読んでいた本をサイドテーブルの上に置いた。
その本は先月の俺の誕生日の時に二人が誕生日プレゼントとしてくれたうちの一冊だった。
姫香は姫香で一緒に図書館に行ったあの日からすっかりと読書家になっていた。
あの後も何度も姫香と一緒に図書館に行っている。時には姫香一人で行くこともあるくらいだ。
コーヒーを二人分淹れた姫香が戻って来た。
「この本面白いか?」
「まだ序盤なのでなんとも……ただ面白そうな予感はしてます」
「そっか。読み終わったら俺にも読ませてくれ」
「もちろんです。というか先に読んでしまってすみません。翔君がもらったのに」
「そんなこと気にしなくていいよ。本は読みたい時に読みたいものを読むのが一番だからな」
「すぐに読んでしまいますね」
「ゆっくりでいいって。自分のペースで読みな。本は逃げないから」
そう言って俺は姫香の淹れてくれたコーヒーに口を付けた。
「それにしてもすっかりと姫香も読書家になったな」
「そうですかね?」
「うん。去年何冊読んだ?」
「去年は……ちょっと待ってくださいね」
姫香は再び立ち上がると自分の部屋に向かった。
おそらくは読書ノートを確認しに行ったのだろう。
姫香は去年から読んだ本をノートに記録していた。
その冊数は去年だけで二冊は終わっていたと俺は記憶している。
リビングに戻って来た姫香は予想通り読書ノートを手に持っていた。
「去年読んだ本は二百十五冊ですね」
「俺より読んでるな。俺は確か二百冊くらいだったから」
「翔君より読んでいると言われると何だか凄い気がしてきますね」
俺よりもたくさん本を読んでいたことが嬉しいのか姫香は「ふふ」と笑った。
「さて、じゃあ俺も真美からもらった本でも読むかな。感想教えろってうるさいし」「私もこの本を読み終わったら感想言い合おうって言われてます」
「真美もすっかりと読書家だな」
「ですね」
その後はまったりとコーヒーを飲みながら二人ソファーに座って読書時間を楽しんだ。
この幸せな時間はきっと歳を取っても変わらないんだろうなと確信していた。
☆☆☆
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