6月18日(金) 7:00〜『天使が傍にいた朝』

 カーテンの隙間から差し込む朝日で俺は目を覚ました。

 どっちのとは言わないが、どうやら薬が効いたらしい。昨日の夜、まだ少しあっただるさはすっかりと消えていた。


「これなら、学校に・・・・・・」


 体を起こそうとして、俺は異変に気づいた。いや、気づいてしまったと言うべきか。

 泊まっていくだろうとは思っていたが、これは完全に予想外だ・・・・・・。


「なんで・・・・・・」


 俺の胸の中で眠ってんだよ、氷室さん!?

 起き上がろうとしたが、予想外の展開に俺は起き上がることができなかった。

 

「それにしても・・・・・・」


 なんて無防備で可愛らしい寝顔だろう。

 長くて白い睫毛。綺麗な形の鼻。薄桜色の唇。

 初めに氷室さんのことを『天使』という表現をした人は得て妙なことを言ったものだ。 

 この寝顔はそれ以外、言い表せないほど、美しく可愛いものだった。

 それに、身に纏っている部屋着も氷室さんの可愛さを引き立たせていた。


「起こすのがもったいないくらいだよな」


 できればずっと見ていたい。

 ずっと傍で見ていたい。

 だけど、そうもいかない。いつもなら、この時間は2人とも学校にいる。

 俺はスマホの時刻表示を見てそう思った。


「氷室さん。朝だぞ」


 氷室さんの肩をトントンと叩いた。

 すると、小さく「んぅ〜」と言って、目を擦り始めた。

 もう、やめてくれ・・・・・・。

 死んじゃう・・・・・・可愛すぎて・・・・・・。


「んー。王野君?」

「お、おはよう。氷室さん」


 『寝起きの天使』そんな言葉が頭の中に浮かんだ。

 氷室さんは、上目遣いで目をとろんっとさせ、微笑んで俺のことを見てくる。

 

「あれ〜?王野君がいる〜」


 そう言って氷室さんは俺の頬をぺちぺちと叩いてきた。

 んっっっ!!?

 もしかして、寝ぼけてる・・・・・・。

 

「なんでいるんですか〜?」

「なんでって、ここ俺の家だから」

「あっ!」


 自分がした大胆な行動に恥ずかしくなったのか、氷室さんの顔は少し赤くなっていた。


「そうでした。昨日、王野君の家にお泊まりして・・・・・・ベッドで一緒に寝たんでした」


 最後の方はごにょごにょと言っていて、なんと言ったか聞き取れなかった。


「そういえば、今何時ですか?」

「7時」

「えっ!?早く学校に行かないと!」

「そうだな。でも、その前に早く起きてくれませんかね?」

「そう、ですね・・・・・・名残惜しいですけど、仕方ないですね」


 やっぱり、最後の方が聞こえなかった。

 というか、そんなこと考えるほどの余裕はない。

 早く起き上がってくれ・・・・・・。


「後5秒だけ、こうしててもいいですか?」


 氷室さんが上目遣いでそんなことを聞いてくる。


「い、いいけど・・・・・・」

「ありがとうございます」


 俺の胸に顔を埋めてくる氷室さん。

 ちょっと待て!それは、予想外なんだが!? 

 そして、氷室さんは5秒経った後に起き上がった。


「どうしましょうか?もう、今から急いで行く必要もないですよね?」

「そうだな。どうせ、今から行ってもあの2人には勝てないだろうしな」

「なら、せっかくですからゆっくり行きますか?」

「そうするか」


 氷室さんが冷静だったので、俺も冷静でいようと頑張った。

 内心はめっちゃドキドキ言っていた。

 きっと、氷室さんに聞かれていただろう。


「じゃあ、朝ごはん作りますね。うふふ、なんだか夫婦みたいですね。私達」

「え・・・・・・」

「作ってきますので、王野君はもう少し横になっててもいいですよ。まだ、病み上がりなので、ギリギリまで横になっていてください。ご飯できたら呼びにきますから」


 氷室さんはそう言い残して、部屋から出て行った。

 夫婦みたい・・・・・・。

 俺の頭の中でその言葉がぐるぐると回っていた。氷室さんは、なんとなく口から零れ落ちただけの言葉かもしれないが、俺にとっては目が覚めるほどの衝撃的な言葉だった。

 俺は氷室さんが朝食を作り終えて、呼びにくるまで起き上がることができなかった。


☆☆☆

次回更新14時!


もう少しで☆が1000にいきます☺️

☆をつけてくださってる皆様

ありがとうございます!

これからもよろしくお願いします!!

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